元引きこもりの哲学者・小川仁志が断言。哲学は人生に奇跡を呼ぶ

2018.04.02
 

そんな充実したある日、知人から山口大学にグローバル教育をする新しい学部をつくるので、来ないかとの誘いを受けました。徳山高専に赴任して以来、すでに8年が経とうとしていました。周南市とは行政だけでなく市民ともかかわりが深くなっており、「哲学カフェ」も根付いていましたが、同じ山口なので移ってもなんとか続けていけると思いました。そこで、誘いを受けることにしたのです。グローバル教育を本格的にやってみたいという思いもありました。

そうして3年前の春、私は山口大学の国際総合科学部という新設学部に転職することになります。ここでは英語で哲学の授業をするだけでなく、グローバルな活動もやることになりました。たとえば、自治体が台湾からの観光客を誘致するためのプロジェクトを支援する活動です。これが卒業研究の一つなのです。不思議なもので、また台湾との縁ができました。

私は再び懐かしい台北に飛び、調査を開始しました。このプロジェクトでは、私の人生のいろんなことが生きています。まず商社マン時代に学んだ中国語商社のツテ、さらに市役所で培ったまちづくりの知識と経験公共哲学者として本質から考える能力等です。結果を出すのは今年ですが、かなり面白いことができるのではないかと今からワクワクしています。

台湾との関係が再び始まったことで、向こうで大きな地震が起きたときには、学生たちと大々的に募金活動も行いました。すると、これも御縁があって、台湾の国会にあたる立法院に招待されたのです。久しぶりに台湾メディアにも出演しました。おそらく台湾との縁はこれからも一生続くものと思われます。

さらに、山口大学に移ってからは、テレビでの活動も広がっていきました。NHKの「あさイチ」やEテレの「100分de名著」などにも出たことで、ついには「世界の哲学者に人生相談」というEテレの新番組にレギュラー出演することになったのです。哲学の番組なんてそれ自体が画期的なのに、そこに指南役としてレギュラーで出演できるとは! 

テレビに関してはもうこれがピークかもしれません。でも、そんなことはどうでもいいのです。私のこの10年の軌跡はまさに奇跡の連続でした。その奇跡が可能になったのは、その土台に哲学があったからだと確信しています。したがって、これからも哲学が土台にある限り私の人生には思いもしない奇跡が起きるはずです。それが哲学に出会い、人生を変えてきた私の実感です。哲学にはそんなすごい力が秘められていると。

だから私は、いつも哲学のススメを説いているのです。とはいえ、四六時中哲学する必要はありません。哲学は時々でいいのです。人生には楽しいこと、ほかにやるべきことがたくさんあります。私にとってもそうです。山口の自然の中で、ぼうっと美しい景色を見る時間も素敵です。子どもたちと過ごす時間も大切です。でも、そんな中に哲学があるのとないのとでは大きく違ってくるのです。だから、人生に時々哲学を……。

毎回長文を読んでいただき、ありがとうございました。皆さんとの出会いにも感謝です! これからも哲学と小川仁志をよろしくお願いいたします。

image by: shutterstock.com

小川仁志

プロフィール:小川仁志(おがわ・ひとし)

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ogawa-photo1970年、京都府生まれ。哲学者・山口大学国際総合科学部准教授。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。徳山工業高等専門学校准教授、米プリンストン大学客員研究員等を経て現職。大学で新しいグローバル教育を牽引する傍ら、商店街で「哲学カフェ」を主宰するなど、市民のための哲学を実践している。また、テレビをはじめ各種メディアにて哲学の普及にも努めている。2018年4月からはEテレ「世界の哲学者に人生相談」にレギュラー出演。専門は公共哲学。著書も多く、海外での翻訳出版も含めると100冊以上。近著に『超・知的生産術』(PHP研究所)、『哲学者が伝えたい人生に役立つ30の言葉』(アスコム)、『悩みを自分に問いかけ、思考すれば、すべて解決する』(電波社)、『突然頭が鋭くなる42の思考実験』(SBクリエイティブ)、『哲学の最新キーワードを読む』(講談社現代新書)等。ブログ「哲学者の小川さん

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