【書評】霞が関は嘘ばかり。財務省が使うマスコミという名の犬

 

財務省は、海外では英訳した日本国家の財務諸表を配っている。それを見せて「日本は大丈夫です」といい国債を売っていながら、国民に対しては財務諸表を伏せて「財政が危ない」といい続けている。日本の財政はまったく問題がないばかりか安全レベルである。著者はイデオロギーで言っているのではない。「数字を見る限り、〈現時点おいては安全だ」といっているだけである。

本当のことを言えば、あと250兆円くらい借金を増やしても日本は大丈夫である。減税余地も、財政出動の余地もある。日本のマスコミは財務省にやすやすと騙されている。日経新聞も企業のことを報じるときはバランスシートのことをいうのに、国のことを報じるときにはいわない。

財務省がこの先に着々と設定しているのは「増税」である。安倍総理は消費税率10%への増税を予定通り2019年10月から実施する。しかし、増税しても、それを全部使い、財政再建は先送りという方針なので、マクロ経済的には増税しないのと同じことになる。増税派が勝ったわけでなく、痛み分け、五分五分である。著者は「増税しないほうがいいと考えるエコノミストである。

財務省には「首相に忖度しなければ出世できない」とか「政治家に逆らうと危ない」などいったプレッシャーはない。逆に政治家を潰す力がある。財務省には他の省庁にはない三つの大きな権限があるからだ。予算編成権、国政調査権、官邸内に張り巡らされた人的ネットワークである。官邸内のほとんどの情報は、財務省に筒抜けになっている。財務省は内閣と十分に対峙できる強い立場にある。

役所の中でも財務省はとくにマスコミ操縦に長けている。マスコミだけでなく、めぼしい学者や知識人をしっかり味方につけている。高名な専門家が財務省寄りの発言をすると、マスコミは疑うことなく、財務省が望むような報道をしてくれる。大半の記者は経済の知識は不足だから、不思議なほどコロッと丸めこまれる。

財務省の役人は、翌日の新聞社説に財務省が希望する内容を書かせることができる。社説というのは、財務省の管理職として普通の仕事だった。社説に書かせたいことがあると、局長が課長級の者を5~6人集め競わせる。局長の指示を受けて、一斉に新聞社にアプローチし、うまくいったり、うまくいかなかったりする。書かせることができた者は褒められ、できなかった者は叱られる。

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