ダイナミックプライシングの視点を変えて使う事例
ここで重要なポイントは、マーケティング活動の初期に、「市場を把握すること」において、顧客の需要をシミュレーションすること、そしてそれを、可能な限り早いスピードを持って、販売価格に反映できるようにすべき点だ。
このポイントを抑えての面白い事例がある。HISグループとコンビニが組む、アプリで食品ロス削減を狙って、賞味期限間近なら半額にすると言う仕組みだ。(日経MJ2月4日号の記事より)
HISとポプラの取り組みでは、ポプラが店舗ごとに、消費期限が近い商品を店舗ごとに登録し、割引クーポンを発行。店舗周辺の利用者にクーポンを配信して、利用者は店舗でクーポンを店員に提示すれば、その割引料金で買うことができるというものだ。これは、食品ロスを出来る限り下げていこうという、環境配慮もできるし、廃棄コストを抑えることもできる。店舗側にとっては集客策にもなる。
同記事によると、ここからファインなども、LINEで通知をしてLINE@でポイントを付加する、という仕組みを始めるとのこと。
AIやIoTなど、ITがより消費者の生活の中で、身近なものになってくると、消費者の利便性を上げることが、ひとつの大きな差別化要因になる。この時に、まず考えていきたいのが、顧客の需要がどこにあるかをベースにすること。やはりここを離れてはいけないのだ。その次に、いかにして顧客の課題を解決するかを仕組み化すること。
その際に、提供するものは顧客価値だ。顧客価値は、顧客が得る利益と、失う犠牲のギャップ。顧客の利便性を上げることは、顧客が犠牲にしている何かを片していく努力にほかならない。
その意味でも、このダイナミックプライシングの考え方は、価格の変動に響くユーザーを持つ業種や、価格弾力性のある、日用材や生鮮食品などの小売業業種にとって、使える考え方だ。ユーザーにとっても、タイミングさえ合えば、お得な買い物が出来るようなサービスを提供するという意味では、一挙両得の考え方になる。
AIが何をするかを考えるのではなく、AIをどう使うか、という意味においても、これから浸透していく価格設定の手法と言えそうだ。
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