塚田氏は、そんな麻生氏の扱い方を心得ている。言われる前に、麻生氏の意向を察して動くこと。2000年にさくら銀行を退職したあと、麻生氏の秘書をつとめた経験から会得したものだろう。
下関北九州道路を熱望する九州財界と麻生太郎氏は切っても切れない関係にある。麻生グループを率いる実弟、麻生泰氏は九州経済連合会会長であり、昨年12月16日に開かれた「下関北九州道路整備促進の会」で「安倍総理が安定した力を持っている時に、この橋の計画を決定したい」と意気込みを語った。
それから4日後のことである。塚田国交副大臣のもとを大家、吉田両議員が訪れたのは。
塚田氏は4月1日の「自民党推薦候補 激励集会」で、両議員の要請についての国交省の対応をこう語った。
「この事業を再スタートするためには、いったん国で調査を引き取らせていただくことになりまして、これを今回の新年度の予算に国で直轄の調査計画に引き上げました」
4,000万円の調査費計上によって、福田政権下の2008年に凍結された下関北九州道路建設計画は息を吹き返した。
塚田氏はよくぞ政策決定の実態を白状してくれたものだ。タテマエとウソだらけの政治家発言より、リアリティがあって、よほど面白い。
塚田氏はつまるところ究極の愚か者であり、正直者でもあった。その会場には支持者だけでなくマスコミの記者が混じっていることを知らないわけでもなかっただろう。
弁舌自慢の政治家はしばしばこの落とし穴にはまる。「日本の国、まさに天皇を中心としている神の国」と神道政治連盟国会議員懇談会で発言し内閣支持率を下げた森喜朗元首相もその一人だ。
塚田氏の場合は、統一地方選のさなかだっただけに、「忖度」発言が麻生氏の推す武内候補に与えた悪影響は少なくなかっただろう。
麻生氏の忠臣として手柄を立てたつもりが、国交副大臣辞任に追い込まれ、奈落の底へ。主従ともにお粗末な一幕を演じたものである。
image by: つかだ一郎 - Home | Facebook