日本人女性も死亡。テロを防げなかった、スリランカ政治の混乱

 

2つ目の謎は、「10日ほど前からテロの情報を複数の情報源から掴んでいたにも関わらず、この連続多発テロを防ぐことが出来なかった」という『謎』です。

一連のテロ攻撃の後に行われたスリランカ政府の国防および情報当局の記者会見によると、「10日ほど前から、NTJなどに属する40名のイスラム過激派をマークしていた」、「複数のテロの可能性を示唆する情報が入っていた」とのことですが、結局、対策と言えるような対策は講じられず、一般市民と外国人の多くを巻き込む事態を起こしてしまいました。

政府筋の“言い訳”では、「ちょうど警戒レベルを上げようとした矢先のテロだった」とのことですが、複数の不穏な情報がもたらされてから十分な時間があったにも関わらず、全く機能していなかったと言えるでしょう。

どうしてこのようなことが起きたのか。私のスリランカでの親友で、私を政府の外交と国防のアドバイザーに就任させたAsangaによると、「この5年ほどで国防大臣が4名交替し、国防にかかる行政は効率的に機能していない。また、大統領と首相の政治的な衝突が激化しており、国防・警察に対する権限の争いが起きているのも一因。実際に指揮系統がバラバラで国軍もすぐには動けないのが現状」とのことで、それが今回、対応が著しく遅れた1つの要因だと考えられます。

この政治的な混乱と指揮系統の不明確さは、私もアドバイザーとして指摘してきたことなのですが、全く改善されることなく、無力感と憤りを感じます。

3つ目の『謎』は、やはり「誰が、そもそも何のためにこのような蛮行に及んだのか」という点です。最初に「犯人捜しはしません」と申し上げましたが、いろいろな情報に触れてもはっきりしてこない状況に直面し、やはり気になる『謎』です。

テロ事件から日が経つにつれ、ISが犯行声明を出したこともあり、【ISの関与】の可能性が高いというような分析結果が報じられています。私の感覚では、「たぶんね。でもメインではない」と考えています。

それはなぜか? まず、犯行声明は出しましたが、通常の内容と違い、具体的なポイント(場所、狙いなど)について語られていません。どちらかというと、「(誰だかは知らないが)よくやった」的なニュアンスが読み取れます。NTJのリーダー格の男がISの犯行声明ビデオに顔出しで登場していますが、その中で語られた内容の信憑性は不確かです。

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