時事通信の記者が外務省に情報公開請求し、天安門事件時の「邦人保護措置」報告資料を入手。その資料を元に当時の関係者などに取材し、記事にしたのです。
●「邦人3500人救出作戦」=最後まで生産続けた松下-天安門事件の危機管理
記事によれば、天安門事件が勃発した4日の翌日から(5日~9日)、複数の大使館員らが手分けをし、北京市内の日本人留学生ら計1,464人をバスで各大学まで迎えに行き、ホテルや北京空港に移送したとのこと。
観光バスも借り上げ、ガソリンを買い集め、嫌がる運転手には通常の何倍もの報酬を与え、兵士から発砲されないようバスの前面窓に「日の丸」を付け、安全な道を選んで留学生らを迎えに行ったそうです。
天安門前の長安街で、事件を鎮圧するために現れた何台もの戦車の車列の前に立ち、行く手を遮った男性の映像は、その後「無名の反逆者」(the Unknown Rebel)と呼ばれ、世界中のメディアが報じましたが、日本の大使館員は「無名の英雄」として、邦人救出に身を呈していたのです。
大使館員たちの必死の救出劇で、事件に絡む邦人負傷者は2人にとどまり、ANAとJALが飛ばした救援機は6~8日で計10便。留学生を含む合計3,133人の人たちが無事帰国しました。
…あれから30年。中国は大きく変わりました。ものすごい速さで変わりました。
車道を埋め尽くす自転車の列や人民服が日常着だったことを知らない若者の時代になってしまいました。
6年前に深センに滞在したとき、外国人が泊まるホテルやレストラン、あるいは富裕層が行くゴルフ場に「出稼ぎ」できている中国人女性の多さに驚きました。
“彼女たち”の多くは子供を故郷に残してきた、お母さんでした。衝撃的だったのは富裕層の人たちの“彼女たち”に対する態度です。
実に冷ややかで、命令的。経済的格差が身分格差であり、それが「階級」として定着していると痛感させられました。
格差社会なら本人の努力次第で成り上がることも可能です。しかし、階級社会では「落ちる」ことはあっても「上がる」のは至難の技。階級は「学歴、職業的地位、所得」などの社会的経済格差が重なりあい構成されているため、「持てる物」と「持たざる者」で分断され、世代を超えて引き継がれていきます。それを目の当たりにしたのです。