何を根拠に。参院選情勢調査で「与党優勢」と媚び売る大マスコミ

 

その他いくつか

第3に、山本太郎のれいわ新選組がどこまで若い世代の共感を集めるか。山本自身は東京選挙区で立てば当選確実だが、敢えて比例に回って政党要件を満たす得票率2%獲得を目指す。彼の代わりに東京で立つのは、沖縄知事選で玉城デニーを支持して有名になった創価学会員。比例名簿に上がったのも造反派やマイノリティが多く、拉致被害家族会の元副代表でありながら安倍批判の著書を刊行した蓮池透、セブン・イレブンの過酷な店舗支配を告発したオーナー、難病ALS患者、女装の東大教授など多彩である。大化けして既存政党を脅かす存在に躍り出ないとも限らない。

第4に、旧民進が立憲と国民に分裂したことによる労組=連合のいわゆる「組織内候補の変転とそれに絡んだ原発ゼロ政策の行方。旧民主から旧民進に至るまでは、連合内の旧同盟系と旧総評系は同床異夢で選挙を戦ってきたが、国民と立憲が分裂したことで、旧同盟系の電力総連、自動車総連、電機連合、UAゼンセン、JAM=基幹労組は国民から、旧総評系の自治労、日教組、情報労連、JR総連、私鉄総連は立憲からと巧い具合に分かれて選挙に携わることになった。このため、立憲は電力総連や電機連合など連合の主流をなす原発推進労組からの締め付けから相対的に自由になって、参院選公約に「原発再稼働を認めず原発ゼロ基本法案の早期成立を目指す」と堂々と謳えるようになった。それに対して国民は「できるだけ早期に原子力に依存しない原発ゼロ社会を実現する」とは謳っているものの、今回はゴリゴリ原発推進の関西電力労組や東芝労組の出身者を担ぐ。

労組側からすれば国民が及び腰ながらも「原発ゼロ社会」を掲げているのは不快極まりないだろうが、ほかに行き場がないからここで戦うしか仕方がない。それにしても国民の政党支持率は1%で、比例で当選できるのは1人か2人ではないか。仮に電力総連が議席を失うようなことになれば、原子力マフィアには大打撃となる。

第5に、選挙後の政党再編の兆しがどれだけ見えてくるかである。上記の労組の動向が軽視できないのは、旧同盟系が肩入れしても国民が共同通信予測のように5議席程度に留まり、労組の比例候補も1人か2人しか当選しないとなると、それらの大企業労組が国民に見切りをつけて自民党支持」に踏みこんで行く可能性があり、そうなると旧総評系労組は訣別して立憲支持を続けざるを得ないので、連合が形式上はともかく実質的には分裂必至となるからである。その場合、国民の良質部分は立憲に不良部分は自民にそれぞれ流れ込むので、国民は先細りとなるだろう。政党要件が満たせなかった場合の社民は立憲に吸収される。

他方、保守勢力の側では維新が伸び悩み、北海道の鈴木宗男はともかくそれ以外に目立った“全国化”が成功しなかった場合、菅義偉官房長官が密かに仕掛けているように、維新が大阪を中心に自民に合流してしまうという奇策が浮上するかもしれない。菅官房長官の意図は、自公が伸び悩んだ場合に維新を連立に引き込む必要が出て来るが、それには公明が強烈に反発するだろうから、維新を自民の大阪支部に吸収してしまえば自公連立の形式が保てるというにある。

いずれにしても選挙戦はまだ序盤から中盤に差し掛かろうかという段階で、あと2週間のうちにどんな波乱が訪れるのかは予断を許さない。

image by: Twitter(@自民党広報)

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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