やるしかない
こうなればもう、手当たり次第に向かっていくしかありません。まずは年商の大きな小売店さんや、有名な小売店さんを攻めていきます。もちろん、そんな簡単に扉は開きません。
そして頼りとするメーカーさんを3社に絞りました。古くから付き合いのある大手メーカーさんと、最近取引が始まった大手メーカーさんと、新興の中小メーカーさんです。これはささやかな戦略と言えるかもしれません。
しかし大手メーカーさんは「拡販に協力する」とは言ってくれますが、動きは鈍いです。一方、新興のメーカーさんは積極的に動いてくれます。大手の小売店さんを紹介してくれるのです。彼らは、その細いツテを頼りに積極的に飛び込んでいきました。すると運が良かったのでしょう、1つまた1つと取引が出来ていったのです。
決して取引価格を安くしたわけではありません。理論好きの営業マンだったことが功を奏したようです。東京のビジネスは、価格で攻めるより理論で攻めた方が攻略できることが分かりました。
さて1年後、この営業所の成績はどうなったでしょう。苦労の甲斐があって初年度1億円の目標は達成することができました。問題は2年目です。販売戦略が無かったのですから、そのまま進んでいけるのでしょうか。
大丈夫です。この1年間で販売戦略の立て方が分かりました。東京営業所の戦略は、主力取り扱い商品を3つに絞り込む、競合問屋の取引が弱い大手小売店の上層部を攻める、決して価格では攻めず、「売れる理由」を説明する、というものです。
そして、初年度の商品別小売店別販売実績をもとに、2年度の数値計画を立てます。営業マンの人数が少ないので、徹底的に大手の小売店さんを攻めることも決めました。実は、あの新興メーカーさんが後で驚いてこう言われたのです。
「大手の小売店さんを紹介しましたが、本当に取引が出来るとは思いませんでした」
若さの勝利かもしれません。そして、販売戦略が無かったのは、営業マンを育てるための作戦だったかもしれません。
■今日のツボ■
- 販売戦略が立てられる責任者ばかりではない
- 戦略がなくても、やるしかない
- その過程で戦略の作り方を学べることもある
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