行列のできる教習所。なぜ全国から島根まで免許を取りにいくのか

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少子化や車離れなどの影響で経営環境の悪化が指摘される自動車教習所市場ですが、島根県にある全国から若者が集まる教習所「Mランド益田校」が話題となっています。なぜ一地方の教習所が人気となっているのでしょうか。MBAホルダーの青山烈士さんが自身の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』で、その戦略・戦術を分析しています。

何を提供する場所なのか

今号は、全国各地から入校者が集まる人気の教習所を分析します。

● 株式会社コガワ計画が展開している島根県益田市にある自動車運転免許教習所「Mランド益田校

戦略ショートストーリー

免許の取得という機会を自分の成長に活かしたい方をターゲットに「ゲスト主義」に支えられた「貴重な体験ができる」、「リフレッシュスポットが充実」等の強みで差別化しています。

他の教習所にはないMランドならではのお楽しみイベントやボランティアお茶などの各種体験を提供することで、ゲスト(教習生)からの支持を得ています。

■分析のポイント

顧客にトイレ掃除をしてもらう企業は、世界中を探しても見つけるのは困難でしょう。しかも、イヤイヤではなく、顧客が進んで自らやりたいと希望する人気コンテンツになっていることは、すごいとしか言いようがないです。

何が起きているかというと、トイレ掃除を価値顧客にとってのうれしさに変換しているのです。「ココロ磨かれる 森の中の教習所」とパンフレットに記載がありますが、まさにトイレ掃除をとおしてココロが磨かれるのでしょう。

ココロが磨かれることでココロの持ち方も変わっていきます。これにより、教習生自身に成長が感じられるわけです。これが「Mランドマジック」と呼ばれる教習生が2週間で大きく変わる要因と考えられます。

当たり前ですが、教習所に行く目的は、免許をとることです。教習所は、教習生に免許をとれるようにする場所ですから、教習所と名がついていれば、どこにいってもほとんどの方が、目的を達成するはずです。

そういった中で免許を取る以外の目的を設定したのが、「Mランド益田校」です。その目的の一つが、「自己成長」です。「自己成長」につながる体験が、トイレ掃除や茶の湯などになります。

多くの方にとって、「自己成長」のために、教習所に行くという発想はなかなか無いと思いますが、合宿というのは、成長する場と捉えやすいので、親和性も高いと思いますし、差別化にもつながっています。

ハード面を充実させたり、イベントなどのコンテンツに力を入れることも大切ですが、それ以上に、主目的以外で主目的と親和性の高い目的を設定することの重要性を示した好事例だと思います。

毎年6,000人以上の卒業生のうち80%の方が口コミで入ってきているということですが、「Mランド」に通い、「Mランド」で経験したことが、自己の成長につながり、その後の人生に役に立ったと感じた人が多いということを示していると言えるでしょう。

今後、「Mランド」がどのような存在になっていくのか注目していきたいです。

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