販売員として商品知識は多く兼ね備えるべき基本的スキルですが、接客中に膨大な知識をお客さんへ披露するタイミングを読み誤ると、購買意欲を減退させてしまうこともあるようです。今回の無料メルマガ『販売力向上講座メールマガジン』では接客販売コンサルタント&トレーナーの坂本りゅういちさんが、お客さんが「商品についてもっと知りたい」と思う接客中のタイミングについて解説しています。
語りすぎの愚
店で接客を受けていて、商品説明をされる時、やたらと語ってくれる販売員の方に出会うことがあります。
「こちらの商品は、〇〇という素材を使っていて、非常に軽量なんですよ。だから、こういう場面で使う時なんかには、すごく重宝するんです。実際に、買っていただいたお客様からも、こういう意見をいただいているんです。だから、おすすめしているんですよね」
商品の魅力を最大限に伝えてくれようとしていることはよくわかるのですが、こういう場合、たいていは、まだ私自身が商品に大した興味も持っていなければ、そもそも商品に触れてもいないということも少なくありません。
そんな状況で、商品のことを延々と語られると、どうなるか。
商品への興味がどんどん薄れていってしまうのです。
これは、語りすぎることで、お客様が目の前にある商品を触ったりする必要がなくなるからという点がひとつと、さらに付け加えるなら、感動を強制されている感が出てしまうのですね。
商品について、先にあれこれ語ってしまうと、お客様は、商品を見る前から、前情報を仕入れることになります。すると、もう商品そのものを触る必要性もなくなるし、その情報がよほど興味の持てる情報でない限りは、「試さなくてもいいや」と思ってしまいます。
よほど興味の持てる情報を伝えるためには、お客様が何を求めているかをきちんと知っておく必要があるので、結局、失敗するわけです。
そして、感動を強制される感覚については、とてもわかりやすい例があります。
よく飲食店なんかで、やたらと語ってくる店主を見かけることがありませんか?「うちの天ぷらは、どこどこで取れた、こんなに新鮮な魚介を、これだけ良い油で、こうやって揚げているんですよ。だから、こんな風に美味しく出来上がるんですよね。この美味しさがわかってくれる人が多いから、ウンタラカンタラ」みたいな。そんな説明よりも早く食べさせてよ、という感じです。
で、実際に食べてみると、本当はそうでもないのに、美味しいと言わないと、何だか悪いような気がしてしまいます。本末転倒です。
こうなると、その店で飲食をすることがやたらとハードルの高いものになるのですが、これと同じことが、小売の店頭でも起こってしまっているということです。
「この商品はこんなにすごいんですよ!」ということをやたらと前情報で語られてしまった後に、「どうぞ試してみてください」と言われても、やはり同じ感覚を覚えます。「こんなに良い素材なんです!」と言われたら、良い素材ですねとしか言いようがありません。
では、語りすぎないためには、どうすればいいのか。
まずは、お客様に商品に触れてもらうことです。実は、語りすぎることが悪いのではなくて、お客様が自分で感じる前に、語ってしまうことが問題なんですね。順序の話です。
先ほどの天ぷらではありませんが、まずお客様に食べてもらうことができたら、本当に良いものならお客様は感動してくれます。その上で、「どうですか?この味を出すのに、これだけのこだわりがあるんですよ」ということが伝えられれば、お客様は当然納得してくれます。
小売販売でも同じで、お客様が求めるものを提案して、触れてもらうことで、お客様は、「え!これいいじゃん!」と思ってくれます。その上で、「そうなんです。これはこれこれこういうものでして…」という語りができれば、お客様は、感動に上乗せされた納得感のある情報を得ることができて、欲しくなります。
ちょっとした順序の違いが、お客様にとっては、大きな影響を与えてしまうんですね。
お客様に商品の魅力やこだわりを語る時、どんなタイミングで語るべきなのか。実際にロープレなどを使って、試してみると良いかもしれません。
今日の質問です。
- やたらと語ってくると思う人の接客にはどんな特徴がありますか?
- 同じように語っているはずなのに、そう感じない接客との違いはどこにありますか?
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