「韓国ホワイト国外し」寄稿文で河野太郎氏が犯した致命的なミス

 

まず、「痛い部分です。

韓国が1965年の日韓請求権協定を長らく認めていたことを説明するために、韓国側の認識をそのまま記載しています。

40年後、2005年8月に、韓国政府は、日本から無償資金協力として受け取った3億ドルには、「強制動員」に関する「苦痛を受けた歴史的被害」の保証も含まれていることを再確認している。それによって、韓国政府は、受領した無償資金のうちの適切な金額をそのような被害者の救済に使わなければならない道義的責任を有することを明確にした。

この、“「強制動員」に関する「苦痛を受けた歴史的被害」の保証”という表現はあくまでも韓国側の認識であり、これをこのような文脈で外務大臣が引用してしまうと、読者は「朝鮮半島出身労働者の全員が強制動員の被害者であったことは事実で、日本国が正式に認めているのだと解釈してしまうでしょう。

ちなみにこのくだりの英訳は

historical fact of suffering of the victims of forced mobilization

です。つまり、韓国側が合意の順守を明確にしていたことを強調する意図で、逆に歴史的事実に関しては韓国側の主張を全面的に認めてしまっているのです。

実際には強制性を伴う徴用が実施されたのは1944年9月からで、日本に来た朝鮮人労働者の数は、自発的な出稼ぎ労働者の方がずっと多かったのですから、そのことを明確に述べずに韓国の認識を無批判に引用するのは手痛い失敗です。私が河野外相の原稿をチェックする立場にいたら、必ずこの部分を書き直したでしょう。

あるいは、河野外相は、この韓国の認識を支持しているのかもしれません。記事では「徴用工」という言葉を使わず、「朝鮮半島出身労働者」という言葉を使っているのに、この不用意な引用で無意味となってしまいました。

次に「惜しい部分です。

ホワイト国から外した理由について、河野外相は次の2点を挙げています。

  1. 過去3年間、優遇措置の前提となる協議に応じてこなかった
  2. その間、韓国の輸出管理をめぐり不適切な事案が発生した

この二番目のポイントも極めて重要なのは言うまでもなく、大いに強調すべきですが、日本政府はなぜかこの部分を曖昧にします。あまり明確にすると、手の内を明かすことになると考えているのかもしれませんが、韓国側で公表された公文書に軍事転用可能な戦略物資が北朝鮮と関係の深い国に流れていた例が明記されていたのだから、そのことを最大限活用すべきと思いますが、非常に控えめな表現しかしません。

これでは、いまひとつことの重大性が伝わらず説得力に欠けますなぜこんな控えめな表現しかしないのか、理解に苦しむところです。

というわけで、従来にない積極性と論理的な説明努力は高く評価できますが、私の観点からは「痛い」「惜しい」部分がある、という分析結果となりました。

事前に見せてくれたら意見できたのですが…。

image by: Twitter(@河野太郎)

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