吉野家に学ぶ「商品力の強化」
こういった状況下でやるべきことは、「差別化の徹底」と「一層のコスト削減」の2つだ。
なぜ外食チェーンでちょっと値上げしただけで顧客流出が起きてしまうのかというと、外食チェーンは商品などの差別化の度合いが弱くなりがちな業態だからだ。差別化の度合いが弱ければ他で簡単に代替できるため、「価格が高くなったから他に行こう」となりやすい。そのため、顧客の流出が起きやすいといえる。
差別化を図るには商品力の強化が欠かせない。ヒット商品を生み出していくことが求められる。これは、牛丼チェーンの「吉野家」が良い例となるだろう。吉野家の既存店売上高は伸び悩んでいたが、19年3~8月期に牛丼の新サイズの「超特盛」やRIZAPとのコラボ商品「ライザップ牛サラダ」、サーロインを使った「特撰 すきやき重」などがヒットし、同期の既存店売上高は前年同期比6.9%増と大きく伸びた。こういったヒット商品を生み出すことが欠かせない。
一層のコスト削減も必要だ。値上げをしなくて済むよう、もしくは値上げしたとしても値上げ幅が小さく済むよう、コスト競争力を高めて利益を確保できるようにしておくべきだ。
このように差別化の徹底と一層のコスト削減が重要となるが、もちろん各社、手をこまぬいているわけではない。
「いきなり!ステーキ」は店舗閉鎖や業態転換で自社競合の解消を図っているほか、5月から一部店舗で牡蠣(かき)の販売を始めるなどメニューで差別化を図ったりしている。
日高屋は10月1日から主力商品のギョーザを刷新して販売を始めた。皮は薄いものを使い、クリスピーな食感を出すようにした。豚肉を増量しながら脂分は減らしている。女性に訴求できるものになっており、新たな顧客層の開拓が期待できる。
大戸屋は10月1日に外食大手のコロワイドから出資を受け、経営の立て直しを図る考えだ。コロワイドが持つ経営資源を活用できれば、コスト削減や販売拡大が見込めるだろう。
リンガーハットは8月からランチメニューを刷新した。一部のメニューを10円値下げしたほか、税別370円のギョーザ定食など5種類のメニューを追加した。リンガーハットは18年まで3年連続で値上げを実施して客離れが起きていたが、お得感のあるメニューを投入し、客足の回復を狙う。
これら各社は厳しい状況に置かれているが、こうした施策を実施し、事態の打開を図りたい考えだ。
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