ラグビー日本代表をBEST8にまで導いた「自分を信じる力」の正体

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史上初のワールドカップベスト8進出を果たし、日本中に大きな感動と勇気を与えたラグビー日本代表。1次リーグでは世界の名だたる強豪を次々と撃破したジェイミー・ジャパンですが、何が彼らの快進撃を可能にしたのでしょうか。健康社会学者の河合薫さんが今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、日本代表がこだわり続けた「ONE TEAM」をキーワードに読み解きます。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2019年10月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

ベスト8に導いた「自分を信じる力」の正体

ラグビーワールドカップ 日本代表が21日に解散しました。最高の闘志と最強の肉体。そして彼らが繰り返した「誇り」「信頼」「ONE TEAM」という言葉は、彼らの活躍と呼応するように私たちの心の奥底にジワジワとしみ込んできました。

私自身、自分でも驚くほど彼らの一挙手一投足に釘付けになりましたし、スコットランド戦でオフロードパスをつなげた稲垣選手のトライは、録画を繰り返し繰り返し見直し、その都度勇気をもらっています。

スポーツの祭典の度に、アスリートたちの心の“強さ”に感動する。苦しみ、もがき、失敗し、絶望の淵に追い詰められ、それでも踏ん張って自分を信じて歩き続ける―――

自分を信じる力とは何なのか?今回はいつもとは少しばかり趣向を変えて考えてみようと思います。

自分を信じる力は、心理学の世界では「自己効力感self-efficacy)」と呼ばれています。自己効力感は、米国の心理学者アルバート・バンデューラが「自己効力理論(theory of self-efficacy)」の中で用いた概念で、自分の力を信じて行動する効力への信念」を意味しています。

自己効力感は自尊心と混同されることがありますが、自尊心が自分への自己評価であるのに対し、自己効力感は自分の行動への信念です。自尊心は性格傾向に影響を受けますが、自己効力感にはそれがありません

ジェイミー・ジョセフHCは、アイルランド戦のロッカールームで、「誰も勝つとは思っていない。誰も僕らがどんな犠牲をしてきたかも分からない。信じているのは僕たちだけ」と言って選手たちを送り出したそうですが、この言葉こそがまさに自己効力感なのです。

心が肉体に及ぼす影響への関心は古くからあり、1900年代初頭からさまざまな研究が進められてきました。やがてバンデューラの自己効力理論が広まり、1990年代以降、更なる興味が注がれるようになります。

例えば、メダルを獲得するオリンピック選手や記録を出す選手のほとんどが、試合前に「自分にはできる」という信念を強く抱いていることが分かったり、自分を信じることが身体活動や運動の促進にも好影響を及ぼす要因であることがわかってきました。

また、自己効力感の高い人ほど、わざと自分にプレシャーをかけることで自分を信じる気持ちを強めていることも確認されました。

自分を信じるからこそ努力できる→努力したからこそいい結果につながる→するとまた自分を信じられる→プレッシャーをかけさらなる高みを目指す―――。

最後は気持ちで勝敗が決まるスポーツの世界だけに、自己効力感がもたらす好循環が重要視されてきたのです。

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