文科省のアンケートを見ていたら気がついたちょっと残念なコト

 

ただし、この相関係数で見る時に要注意なのが、

「相関関係がある」≠「因果関係がある」

あるいは

「相関関係がない」≠「因果関係がない」

ということである。因果関係とは、どうやら別物のようなのである。

例えば、以前にこのメルマガ上で、「東大生の小学生時の習い事No.1は、水泳」ということを紹介した。

● 参考記事→まぐまぐニュース「東大生の6割が小学生のとき水泳教室に通っていた。だから何だ

この結果からは、東大生と水泳ということには、相関関係がありそうである。しかしながら、それは「水泳に通っていたという要因から、東大生になった」ということには結びつかないということ。例えば、東大生になった子どものいる環境には、周囲に水泳教室があることが多かった、という可能性も考えられる。これが「相関関係があっても、因果関係があるとは言い切れない」という一例である。

この手の要因は他にも多様に考えられる。要因の特定は、難しいのである。

先の例でいうと、「事前テスト」と「点数」に強い相関が出ると予想した。しかし、実際にとってみたとしても、相関係数に高い数値が出ない可能性もある。

なぜか。

確かに、事前テストを多くしたから点数が高かったという子どもが、多く存在するはずである。1年間、毎日のようにテスト対策練習をした学校の点数は当然上がるだろうということは容易に予想される。

一方で、そんなことを一度も全くしなかったのに、点数が高かったという子どもも存在する。元々塾通いが多く、テスト系学力の高い子どもが集まる地域の学校(所得とかなり強い相関がある)や、入学困難な私立中学を受験する子どもが多い学校である。あるいは、それと全く関係なく、すごく勉強にセンスのある子どもである(いわゆる天才タイプ)。

この両者は、相殺関係にある。「事前テストをした」「事前テストをしていない」という真逆の方法に関わらず、同一の結果(点数)を示すからである。テストの点数が上がる要因が、「単純なテスト慣れ」と「本来の学力の高さ」の両方に関わるからである。だから、相関係数をとると、予想に反する小さな値になることがある。

じゃあ、相関係数をとっても意味がないじゃないかというと、そうでもない。そういう考察をする余地ができる訳である。少なくとも、相関がないということは、それさえやっていれば他方がOKということにはならないという事実が示せる(例:「早寝早起き朝ごはん」だけでは、点数が上がらないということ。当たり前だが、点数を高めるには、勉強が必要である)。強い相関があるということは、何かしらの関係性があるということが示唆される。

まあいずれにしろ、あらゆる教育行為と現在の学力テストの点数に相関関係がないということは、何かと考えるべき事実である。

折角文科省が全国から集めたデータ。わざわざ一般公開しているのだから、何かしら、現場に役立てたいと思う次第である。

image by: Shutterstock.com

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