高速道路のサービスエリアは、もはや休憩のためにのみ立ち寄る場所ではなくなっているようです。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』でMBAホルダーの青山烈士さんが紹介しているのは、東名高速海老名サービスエリアの名物となっている「世界一のメロンパン」。地元の方にも愛される、ギネスも認定した名物メロンパンを作り上げた企業の戦略と戦術を、青山さんが詳細に分析しています。
名物を作る
今号は、販売数世界一のメロンパン専門店を分析します。
● 西洋フード・コンパスグループが運営しているサービスエリアのベーカリー「ぽるとがる」
戦略ショートストーリー
メロンパン好きな方をターゲットに「売店の運営ノウハウ」や「名物を作り出す企画力」に支えられた「世界一のメロンパン」等の強みで差別化しています。
世界一のインパクトを最大限、集客に活かしています。メロンパン好きの嗜好に合わせた複数のこだわりのメロンパンを品揃えすることで、継続的に支持を得ています。
■分析のポイント
高速道路のサービスエリア(SA)は、基本的にどこかに向かう途中で食事やお手洗い、休憩のために立ち寄る場所です。
ドライバーの方であれば、休憩場所を決めている方もいるでしょうがSAは約50kmおき、パーキングエリア(PA)は約15kmおきにはあるようですので、一般の方であれば、走りながら時間を見て「次のSAで食事をとろうか」といった感じでSAに立ち寄る方も多いのではないでしょうか。
ですので、SA側からみて隣のSAではなく、自SAに集客を図ることは簡単ではありません。顧客からみて●●SAでなければいけないという理由は少ないからです。
海老名SAは、海老名の名物となった「ぽるとがる」のメロンパンなど海老名SAに立ち寄る理由を作ることができていることはすばらしいことだと思います。
また、SAの売店から見た場合、とにかくSAに来たお客さんをいかにして、自店に来てもらうかが重要です。
店舗数が多い(顧客にとって選択肢が多い)場合にはまず、自店の存在を認知してもらわなければなりませんし、そのうえで顧客の選択肢の中に入り、最終的に自店を選んでいただかなければ、自店の売り上げにはつながりません。その場での勝負ということですね。
「ぽるとがる」は、まず、SAに立ち寄った方の目に入るようにのぼりや店の外にある臨時販売コーナーなどで、積極的にSAに立ち寄った方の視界に入るように努めています。さらにポスターなど「世界一」を徹底的にアピールすることで関心を引くことで、顧客の選択肢に入り、自店を覗いてくれれば、人だかりができているので人気店であることがわかりますから、ここで買っておかなければという心理になることが期待できます。
自店に来店してもらえるように、よく考えられた販売設計ができていると言えるでしょう。
そして、「ぽるとがる」のメロンパンには地元に根強いファンがいることも重要なポイントです。実は高速道路を利用しなくても海老名SAには入れるようで地元の方は、一般道から車で行けます。93年に発売されて以来、地元の方に愛されていてギネスに挑戦した時も、多くの地元の方の後押しがあったようです。やはり、地元の方に応援されるお店は強いです。地元の方にとっても、一緒に作り上げた自慢の名物だと思いますし、皆で達成した世界一は誇らしいでしょうね。
世界一に挑戦するようなプロモーションや顧客との関係づくりの一つひとつの積み重ねが名物を作っていくのだと思います。今回は、顧客との関係性の重要性を改めて考えさせられる好事例だと思います。
今後、「海老名メロンパン」がどのような存在になっていくのか注目していきたいです。