年末や退職時に会社から交付してもらう源泉徴収票。この記事を読まれている方にとっては、「交付されるのが当たり前だろう」と思われるでしょうが、世の中には交付してくれない会社もあるんだそうです。また源泉徴収票だけでなく、給与明細すら出してくれない会社も存在すると言いますから驚きです。普通に働いている人にとってはレアケースだとは思いますが、万が一そのような会社に勤めてしまった場合どうしたら良いのか?現役の社労士で、無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』の著者・飯田弘和さんがその違法性を指摘し、対策を紹介しています。
給料明細書の不交付について
一般の人からすると信じられないかもしれませんが、私が労働者から受ける相談の中には、「会社が給与明細書を出してくれない」というものがあります。そんな会社あるの!?と耳を疑いたくなりますが、けっこう、このような相談を受けます。きっと、このような会社は、相当やましいことをしているのでしょうね。
給与明細書を出さないのは、所得税法違反です。所得税法231条で、会社には給与明細書を交付する義務が定められています。しかも、所得税法242条第7項で、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」と罰則まで定められています。
また、年末や退職時には、会社から源泉徴収票を交付してもらうと思いますが、この源泉徴収票を出してくれないというのもよく聞く話です。面倒くさいのか、交付できないやましい事情があるのか、はたまた労働者への嫌がらせか、理由は分かりません。しかし、源泉徴収票を出さないことは違法です。所得税法226条で、会社には交付義務が課されています。
では、会社が給与明細書や源泉徴収票を出してくれないとき、労働者はどこに相談すればよいでしょう?これらの相談先は税務署になります。所得税法違反なのだから、税務署が対応すべき問題です。
時々、税務署に相談に行ったけれど、門前払いされたという相談も受けます。それは、税務署職員の対応が間違っています(面倒くさいのか法令等を知らないのか分かりませんが…)。業務委託などではなく、雇用契約により働いている労働者であれば、税務署が相談対応してくれます。
そして、税務署から会社への指導を求めるには、「給与支払明細書不交付の届出」「源泉徴収票不交付の届出」を管轄の税務署長宛てに提出します。この届出を受けると、税務署は会社に対して指導を行います。ただし、行政指導というのは、何ら強制力のあるものではありません。行政指導に従うかどうかまでは保証できません。しかし、税務署からの行政指導であれば、かなり効果が期待できます。
ちなみに、「給与支払明細書不交付の届出」や「源泉徴収票不交付の届出」の手続きについては、国税庁のHPに載っています。届出用紙は、そこからダウンロードできます。
もし、給与明細書や源泉徴収票を出してもらえず困っている労働者の方がいましたら、管轄の税務署で「給与支払明細書不交付の届出手続」や「源泉徴収票不交付の届出手続」を行ってみては如何でしょう。また、余計なお世話かもしれませんが、個人的には、そのような会社にはとっとと見切りをつけて、転職先を探すことも必要かと思います。
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