僧侶の「怪談説法」に客が殺到。人々はなぜ「恐怖」を求めるのか

 

「僧侶が恐怖心をあおってどうする」と仏教界から批判が相次ぐ

――怪談説法は現在でこそ『予約がとりにくい法話』と呼ばれるほどの人気を博していますが、往時は賛成意見ばかりではなかったのではないですか。

三木「はい。それはもう、批判ばかりでした。『怪談グランプリ』のオンエア翌日以降は1日中、抗議の電話が鳴りっぱなし。最低でも10本はかかってきていました。そのうち9割が仏教関係者で、『人々を恐怖心から解放するべきなのが僧職なのに、率先して煽ってどうする』『仏教が怪しい新興宗教のように思われる』といった内容が多かったです。あまりにも抗議が多いため、私も『怪談を語るのは、やめたほうがいいのだろうか』と悩むようになりました」

――やはり激しい反発があったのですね。

三木「苦悩しましてね。公園に集まってくれた若者たちに、続けるべきかどうかを相談しました。すると彼らが、『怪談によって仏縁をもらったのだから、やめないでほしい』と励ましてくれたんです。私の方が背中を押されましたね。初めて夜の公園で怪談を語ったあの時、じっと聞き耳を立ててくれた少年たちの瞳の輝きを忘れてはいけないなと、原点に立ち返った気がしました」

――新刊によると、稲川淳二さんの存在も大きかったようですね。

三木「これからも『続けよう』と決心したのは、稲川淳二さんの助言があったからです。僧侶が怪談を語っているという噂は、どうしても歪んで伝わります。さんざん陰口も叩かれますしね……。何度も『もうやめるべきか』と悩みました。それで稲川さんに、『もう怪談はやめるかもしれない』と打ち明けました。すると、『自分も認知されるまでに10年かかった。10年は続けた方がいい』とおっしゃったんです。おっしゃった通りになりました」

▲批判的な意見が占めるなか、稲川淳二をはじめ多くの人に背中を押され、「怪談説法」を続けることができたという

▲批判的な意見が占めるなか、稲川淳二をはじめ多くの人に背中を押され、「怪談説法」を続けることができたという

恨みを残した人たちの背景もしっかり語らなければ

――やはり、理解を得るためには何事も10年はかかるのですね。その甲斐あってこの頃は、ご自身が住職をされている蓮久寺のみならず、日本中の寺社で怪談説法を語っておられますよね。しかも、どこの会場も超満員で。このような動きになったのは、いつからですか。

三木「本当に、ここ最近ですよ。一昨年くらい前から、急に解禁ムードになってきたんです。僧職に就く方々が実際に私の怪談説法を聴きに来られ、『もっと、こけおどしなのかと思っていた。ずっと批判的だったが、誤解だった』とおっしゃられて。どうも、『あなたには悪霊が取り憑いている!』と聴衆を脅して高額な金銭を要求するような内容だと思われていたようなんです(苦笑)。私がやっているのは、あくまで怪談を通して、『人が生きるということ、人が死ぬということ』を説く、言わばトークライブですから」

▲最近は他の寺院からも説法を依頼されるようになった

▲最近は他の寺院からも説法を依頼されるようになった

――観客に若い人が多いのも特徴ですね。

三木「若者に向かって、『仏様が許すことの大切さを説いておられます』とだけ語ったところで、伝わらないですよ。リアルではないから。だから私は、恨みを残していった人の背景もしっかりと語るんです。そうでないと、真に迫らない。そういうところが、若者に受け入れられる理由だと思います」

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