なぜ土門拳は、「味」という字の「未」の部分を大きく書いたのか

shutterstock_497394895
 

何気ない一言が人生を左右する…。人には時として、そんな転機が訪れることがあります。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、てんぷら職人として名高い近藤文夫氏の心の支えとなった、写真家の土門拳氏による言葉を紹介しています。

土門拳さんからいただいた一字

池波正太郎や山本健吉、土門拳など、各界一流の食通たちの舌を唸らせ、昨年10月にはてんぷら職人として初となる「現代の名工」に選出された「てんぷら 近藤」店主・近藤文夫氏。

72歳になるいまなお、人々を感動で笑顔にする最高のてんぷらを求め、現場の第一線に立ち続ける近藤氏に、人生・仕事の要諦、心の支えにしてきた言葉を語っていただきました。

心の支えになった一流の方々の言葉

当時の山の上ホテルには、文化人がよくいらっしゃっていましてね。その中で、特に親しく付き合ったのが、池波正太郎さん、山本健吉さん、草野心平さん、それから写真家の土門拳さん。

そうした方々が亡くなる最期まで私のてんぷらを食べに来てくださった。

ある時、池波さんにこういうことを言われました。「絶対に天狗になるな」と。天狗になったらそこで仕事が止まっちゃうよと。だから私は、これまで天狗になった覚えは一度もない。天狗にならずに努力を続ければ、自然と道ができるんです。

それから、私が26、7歳の頃、土門さんに「味」と一文字だけ書かれた色紙をいただきました。

それまでの私は、単においしいものをつくるのが味だと思っていた。でも土門さんの色紙を見ていると、それは大きな間違いだと分かった。

味は口に未来の未と書くでしょう?しかも土門さんの「味」は「口」が小さくて「未」が大きい。つまり、料理はただおいしいだけじゃだめで、未来にずっと残っていく“感動”がないとだめだと気づかされたんです。

以来、季節に合わない素材は絶対に出さないとか、守るべき部分をきちっと守りながら、お客さんが心から喜んで感動するものをお出ししたいという思いで、てんぷらを揚げるようになりました。

image by: Shutterstock.com

致知出版社この著者の記事一覧

京セラ・稲盛和夫氏、サッカー日本代表・岡田武史氏など、人間力を高める月刊誌『致知(ちち)』に登場した各界一流人の名言や仕事術など、あなたの「人間力アップ」に役立つ情報を配信中。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 致知出版社の「人間力メルマガ」 』

【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

print
いま読まれてます

  • なぜ土門拳は、「味」という字の「未」の部分を大きく書いたのか
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け