北という語については、各言語において、その一は、真夜中とか、冬とかの語によるもの、これは南を真昼とか太陽の方向とのいう語の逆である。第二、背後の意、南を前面と捉えるものの対語、漢字の北はこの考え方の字とか。その三は、北を左という単語で捉えるもの。南を右と捉えるのと逆である。その四は風による命名。
日本語の北は、東や西ほど明瞭ではない。キタナシ(汚)という語があり、ナシは甚だしい意の古語であるので、キタが汚に当たる。黒、汚れの意味の語源キタが存在したと考えられ、これがそのまま「北」の語源ではあるまいかと大野晋博士は推測する。日本語では「光の方向」を意味するカゲトモが「南」を指した。従って、その反対概念である「黒・汚・闇」を表すキタによって「北」を捉えたのは自然であろうというわけである。
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