大学で道を外してしまう選手たち
大学を経由してプロ野球選手やJリーガーになった選手はたくさんいるが一握りの選手のみである。大学くらいになると自分の立ち位置も分かってくるので「この先、野球やサッカーを続けても見込みはない」あるいは「プロになれる可能性はほぼゼロに近い」と思っても不思議はない。監視をしてくれる人も中学や高校までと比べると圧倒的に少なくなるので道から外れやすい。2人とも野球やサッカーのエリートであり、恵まれた環境でプレーしてきた選手になるがこんなことになるとは誰も予想できなかっただろう。
こういう事件が発生すると「野球やサッカーばかりしてきたのが良くない」、「人間教育はどうなっているのか?」という話になるがほとんど全ての人はこんな犯罪は犯さない。「野球やサッカーだけしかしてこなかったのが悪い」という話にもなるが「極端な例」を持ち出して野球あるいはサッカーを批判するのは誤りと言える。この2人レベルで学生時代にスポーツに打ち込んできた人が、後々、犯罪を犯す確率は学生時代に何も熱中するものがなかったごく普通の人が犯罪者になる確率よりもはるかに低いと思われる。
なので「野球やサッカーだけしかしてこなかったから…」という風な批判は的外れな意見だと思うが、「セカンドキャリアの問題」は野球界でもサッカーでも無視できない。この2人ほど高校時代にレベルの高い環境でプレーしてきた選手であれば「プロになること」は大きな目標として掲げてきたはずである。特にU-18日本代表に選出されている鴨池氏くらいになると「Jリーガーになること」は現実的な目標だったと思うが「高校卒業時にJリーガーになる」という目標は達成できなかった。この時点で1つの夢が潰えたことになる。
プロになるのは難しい
改めて言うまでもない話になるが「プロになる」のは大変なことである。Jリーグは56クラブあるが各チームが保有する選手の数は30名前後である。単純に56クラブ×30人だと1,680名である。外国人選手もいることを考えると「狭き門」である。鴨池氏のように高校時代に年代別代表に選出されたクラスの選手がトップ昇格を果たせないケースは多々ある。当然、FC東京くらいのチームになるとトップ昇格のハードルは相当に高くて、今オフに北九州に加入したFW佐藤亮(明治大)でさえ、FC東京のときはトップ昇格を逃している。
彼はFC東京U-18の頃から注目を集める選手であり、2016年にはU-19日本代表に選出されているが、大学に進んでいる。明治大の顔として大学時代は華々しい活躍を見せたが、北九州入りが決まった時期も他のチームメイトと比べると遅かった。しかも、MF安部柊(FC東京)やDF中村帆(FC東京)やDF森下龍(鳥栖)などが早々にJ1のクラブに内定する中、J3からの昇格組である北九州に加入することになったので「高校卒業の時点でも今の大学卒業の時点でもプロ側の評価はそこまで高くなかった」と推測できる。
FW佐藤亮ほど高校や大学で実績を残した選手でさえ、「プロ入りできるか微妙」と言えるくらいなので大変な世界である。「ほとんどの選手はプロになることは出来ずに一般社会で働くことになる」ということは分かった上で高校や大学の監督やコーチは指導をしていると思うが「野球やサッカーしかできない」、「他のことは全くできない」という選手はどうしても出てきてしまう。サッカー界はアジアや欧州などでもプレーできる可能性があるので「野球よりは選択肢は多い」と言えるが2人のようなニュースを聞くと寂しい気持ちになる。
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