4月末までに新型肺炎の完全収束がなければ東京五輪は絶望的な訳

 

岩田健太郎医師の告発にほぼ問題は浮き出ているのでは

ダイヤモンド・プリンセス号への対処を中心として、日本のこの問題への対応が世界中の非難対象になるほど酷いことになったのかの総括は、すべてが一段落した後に詳しく論じられることになろう。

今の時点で直感的に判断する限り、この国が危機管理ができない致命的な原因は明らかで、9・11では経産省のとりわけ今井尚哉=現首相補佐官を筆頭とする原発官僚であったのと同様に、今の厚労省では大坪を象徴とする医系技官の無為無能のためである。

神戸大学の岩田健太郎医師のYouTube映像を通じての告発が話題になり、余りの反響の大きさと、恐らく彼が指摘した問題点のいくつかを改善するとの厚労省側からのアプローチもあったのではないかと推測されるが、彼は問題提起の目的は果たしたと言ってそれをYouTubeから削除した。

根源的には「そもそも常駐しているプロの感染対策の専門家が1人もいない」「やっているのは厚労省の官僚たち」にすぎないということである。そのため、何が船内で起きているかというと、「レッドゾーンとグリーンゾーンと言って、ウイルスがまったくない安全なゾーンと、ウイルスがいるかもしれない危ないゾーンをキチッと分けて、レッドゾーンではPPEという防護服をつけ、グリーンゾーンでは何もしなくていい。こういう風にキチッと区別することによって、ウイルスから身を守るのが我々の世界の鉄則。ところが、ダイヤモンド・プリンセスの中はグリーンもレッドもぐちゃぐちゃで、どこが危なくてどこが危なくないのか、もう、どこの手すり、どこのじゅうたん、どこにウイルスがいるのか、さっぱりわからない」という状態に陥っていた。

どうしたらいいのかと言うと、「日本にCDC(疾病管理予防センター)がない」ということに行き着く。米国のそれは、本部7,000人、地方と海外の支部8,500人、計1万5,500人の様々な分野の専門家を常時抱えていて、予算も日本円で1兆5,000億円。それに対して日本のそれに当たる国立感染研究所は人員306人、予算41億円。もう涙ぐんでしまうようなお粗末な現実である。しかし専門家の中には、今から別途に日本版CDCを作るよりも、感染症研究所と各県・主要都市にある衛生研究所を巧くネットワークして活用すれば、日本の医師や専門家たちの力量からすればいかなる危機にも対応可能だという主張もある、

今それを判断するだけの材料を持ち合わせないが、要するに、厚労省の医系技官が何でも分かっているかのような顔をして権限を振るっているのを許していると、この国は滅びに向かうののではないかという予感に取り憑かれる。

ちなみに、中国には米国を模倣したと思われる中国版CDCがある。それがどれほどのものであるかはこれから調査しようと思うが、その名の組織があるだけ日本よりマシなのではないか。

image by: 首相官邸

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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