ディズニーではなく中国に怒れ!映画『ムーラン』を襲った2つの不幸

 

エンドロールで明らかになった「不都合な撮影場所」

ハプニングはこれだけではありませんでした。やっと公開された映画を見た観客からのある指摘によって、さらにボイコット運動は勢いを増しています。以下、一部報道を引用します。

さらに今月7日には、映画のエンドロールに新疆自治政府の機関が複数掲載されていることを、ソーシャルメディアのユーザーが発見。トルファン市の治安当局や、「中国共産党・新疆ウイグル自治区委員会広報部」といった名前もあった。エンドロールの名前を指摘した呉志麗さんはツイッターで、「(新疆は)文化的ジェノサイド(大量虐殺)が行われている場所だ。ディズニーは新疆で広範囲な撮影を行ったが、字幕では『中国北西部』と表記されていた」と指摘した。

 

中国の専門家エイドリアン・ゼンツ氏はBBCの取材で、トルファン市の治安当局は、ウイグル人の「再教育」を行っている部署だと説明。また、エンドロールにあった「広報部」は新疆でプロパガンダ政策を任されている部署で、収容施設の建設や、施設内の警備員の雇用も行っているという。ゼンツ氏によると、トルファン市では少なくとも2013年8月から「再教育」が始まった証拠があり、女性がヴェールをまとったり、男性がひげを生やしただけで収容施設に送られている。(中略)香港の著名な民主化活動家の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏も「事態はどんどん悪くなっている!」とツイート。「ムーランを観ることで、あなたは(主演俳優の立場によって)警察の暴力と人種的不正義に目をつむるだけでなく、ウイグル人の集団監禁に共謀する可能性も出てきた」。

出典:ディズニー新作映画「ムーラン」、新疆で撮影 エンドロールで発覚


※ 編集部注:新疆ウイグル自治区とは

中国当局によるウイグル族への人権弾圧が国際問題化している地域。「中国に走る動揺。予想以上だったトランプ『国交断絶』恫喝の効果」等でもお伝えしたとおり、トランプ政権は「ウイグル人権法案」を可決するなど批判を強めている。


この運動は、香港、台湾、タイなどを中心に広がっています。タイでは劇場公開となっているため、ボイコット運動が過熱すれば観客が来ないのが一目瞭然となります。

共産党に迎合せざるを得ない中国人芸能人の宿命

この件について、私の見解を述べさせて頂くと、もったいないという感想です。もちろん、作品を作るにあたってディズニー側と共産党との取引はあったでしょうし、撮影部隊が数か月間トルファンにいたかもしれません。撮影しているすぐそばに収容施設があって、その中ではウイグル人たちが苦しい日々を送っていたかもしれません。

ただ、作品を作っている人々は政治的事情とは関係なく、真剣に作品作りに勤しんでいたはずです。主演女優も、体力も精神力も必要だったことでしょう。出来上がった作品は、予告編やメイキングを見るだけでも、壮大なスケール感のある魅力的なものです。

中国では、ジャッキーチェンがそうであるように、中国人として芸能活動を広げるためには、共産党に迎合しなければならないのも、彼らの宿命です。そうしなければ、活動の場を奪われ、場合によっては逮捕される可能性もあります。

中には香港の歌手である何韻詩(デニス・ホー)さんのように、共産党に立ち向かう勇気ある人もいますが、それは本当にごくわずかです。多くの中国人は、自身を守るために共産党に迎合せざるをえないのです。それは、中国で芸能生活を展開している台湾の芸能人たちも同様です。

ただ、劉亦菲という人は、アメリカで育っている上に、中国国籍とアメリカ国籍の両方を持っているようです。少なくとも、中国を国外から見る視点を持っている人であり、国内にしがみつかなくても生きる術のある人が、あえて共産党に迎合している点については、私も疑問です。もしかして、本当に共産党に心酔しているのかもしれません。

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