元国税が指摘。千人計画前から日本の先端技術を盗んでいた中国の手口

 

先進企業の技術情報が吸い取られる

中国版「タックスヘイブン」の一番恐ろしい罠というのは、進出した企業の技術情報が吸い取られるということです。中国が改革開放政策を講じ始めた当初、外資には資本の制限がありました。自動車などの機械製造分野では、外資の資本割合は50%を超えてはならない、ということになっていました(現在はこの資本割合の制限はかなり緩和されましたが、重要な産業においてはある程度残っています)。

だから、日本のメーカーが中国に進出するときには、資本100%の子会社をつくることはできず、中国側と合弁企業をつくるしかありませんでした。だから中国に進出した日本の自動車メーカー、電気メーカーは、ことごとく中国との合弁会社をつくっています。これが後年、大きな仇となるのです。

たとえば日本の家電メーカーが、中国に進出したのは、1970年代の後半です。1978年、中国の実力者のトウ小平が、日本を訪れた際、大阪のパナソニックの工場を視察しました。案内役の松下幸之助に、トウ小平は「中国の近代化を手伝ってくれませんか」と言ったそうです。松下幸之助は「できる限りのことをします」と約束し、翌年には北京駐在所を設置しました。パナソニックは1987年に、北京にブラウン管製造の合弁会社をつくりました。これが日本企業としては戦後初めての中国工場となったのです。

もちろん、松下幸之助としては、「安い労働力の供給源」としての中国に大きな魅力を感じていたはずです。そして、いずれは大きな家電の市場になることも見越していたでしょう。

しかし松下幸之助が見落としていた点があります。それは、中国が下請け工場だけに納まらず、自ら企業を起ち上げ、日本の家電メーカーを脅かす存在になるということです。しかも20年という非常に短期間で、です。

日本の企業が海外に進出するということは、日本の技術が海外に流出するということになります。企業がどれほど技術の流出防止に努めたとしても、外国に合弁会社までつくり、工場設備を建ててしまえば技術流出を止められるはずがありません。

そして進出先の国では、当然、技術力が上がります。日本人が長年努力して作り上げてきた技術が、企業の海外進出によって簡単に外国に提供されてしまうのです。中国の企業が、急激に発展したのは、このことが大きな要因なのです。

改革開放からわずか20年後に、中国には日本企業の強力な競争相手となる企業が起ち上がってきました。これは、パナソニックが中国に進出したときには予想だにしてなかったことです。

しかも現在に至っては、日本の一流メーカーが中国企業に買収されてしまうほどになったのです。たとえば2015年に、東芝の白モノ家電分野である「東芝ライフスタイル」を、中国の大手家電メーカー「美的集団」が買収しました。ご存知のように、東芝は日本を代表する家電メーカーです。そして、東芝の白モノ家電というと、かつては一世を風靡した東芝の主力商品でした。その主力商品分野を、中国のメーカーに買収されてしまったわけです。多くの日本人に、中国経済の脅威をひしひしと感じさせたはずです。

現在も中国は、外国企業に対して優遇的な税制を敷いています。最先端技術の分野の外国企業については、税制の優遇措置があるのです。

中国の法人税は約30%ですが、この外国企業優遇措置を使えば、10%程度に抑えることができるのです。先進国の現在の法人税は安いところでも20%程度ですので、中国はそれよりも半分程度で済むわけです。しかも、まだまだ中国の人件費は安いのです。

だから、日本や欧米の企業が、中国で会社をつくり製品をつくって輸出をし、中国で税金を払えば、非常に大きな儲けとなります。しかしそういう目先の利益に目がくらんで安易に中国に工場を移したりすると、後でとんでもないしっぺ返しを食うのです。

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image by: humphery / Shutterstock.com

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