いじめ被害側の知らぬ間に「第三者委員会」を設置した京都府の異常

 

第三者委員会が知らぬ間に設置される異常事態

Aさんの保護者はその後も話し合いを求めたが、何ら進展もしなかったのである。

事態が急転したのは、平成31年2月のことである。いじめ行為から1年8か月経って、何の説明もなく京都府教育委員会から、「文書を送るのでそこに本件のことを詳しく書いて送り返してください」と言われたのだ。

Aさんの保護者は、何度も同じ話をしていたが、ここに改めて詳しい経緯を書いて指示通りに教育委員会に送付した。

そして、これがいじめ重大事態に関する第三者委員会設置の申し立てだとされたのだった。

結果的に第三者委員会は設置される運びとなったが、委員の選出においては、被害者側の意見を聞くこともなく、勝手に委員会のメンバーが決まり、勝手に委員会が始まったという形であった。

さらに、この第三者委員会は、被害者本人の聞き取りをしておらず、十分な調査をしないまま結果を出したのだ。

第三者委員会が作成した報告書によれば、Aさんの特徴として、「初めての人や場所では、自分から話をすることが苦手である」との記載がある。

また、いじめの被害者が1年8か月の放置された状態であるということは、いじめ行為を訴えたにもかかわらず、自分の話を大人の代表でもある教職員が無視を続けたことを意味する。この状況下で、第三者委員会の委員がいかに専門的な知見があろうが、被害者本人の聞き取りを円滑にできるはずもない。

事実として、第三者委員会から被害生徒であるAさんへの聞き取り要請はあった。しかし、Aさんのショック状態と要望によりAさんの保護者の同席をAさん自身が求めたのだが、これを委員会は拒否して、最も重要な聞き取りを行わなかったのだ。

一方でいじめがあった事実を否定したい学校といじめ行為後すぐに交代となった、事情を全く知らない新校長のもと、作成された学校の報告書を盲目的に追随しようとした。

再調査が認められるが……

結果、現在、京都府は再調査を認め、再調査委員会を形成することを決定したというが、前任調査委員会と同様に、委員となるメンバーについて被害者側に事前の説明などは行わず、再調査委員会は始まります、としているのみなのだ。(※編集部註:再調査委員会は2020年10月13日より開始)

今後の再調査委員会は、その設立に瑕疵があるところではあるが、調査をするのであれば、被害者との信頼関係をしっかりと持ち、十分な調査をしてもらいたいところである。しかし、少なからずいじめの専門委員を執行するものであれば、設置の瑕疵は極めて重大な行政による暴挙であると考えるべきだろう。

私が知り得る限り、山梨県北杜市のいじめ暴行事件の調査委員会は、設置の瑕疵の重大な違反を第三者委員会が自ら指摘し、解散を決めている。その後、被害者推薦の委員を第三者委員会に加入させて、いじめ調査に当たった。これこそ、勇気をもって正義を執行する第三者委員会の姿であろう。

【関連】いじめ第三者委員会が自ら解散を提案、北杜市教育委員会の異常

いじめ第三者委員会の基本は

そもそもいじめ防止対策推進法ではいじめに関しての調査委員会についての規定は4つ存在しているのだが、よくニュースになる第三者委員会はいじめ防止対策推進法28条1項に基づく、28条委員会のことである。

第二十八条 学校の設置者又はその設置する学校は、次に掲げる場合には、その事態(以下「重大事態」という。)に対処し、及び当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため、速やかに、当該学校の設置者又はその設置する学校の下に組織を設け、質問票の使用その他の適切な方法により当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行うものとする。

 いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。

 いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。

各都道府県や市区町村などの地域で「いじめ条例」を定め、このいじめ防止対策推進法に基づく取り決めをしているのだが、この条例では多く「第三者委員会の委員の選任権は学校もしくは学校の設置者」としている。

ちなみに、学校の設置者とは「教育委員会」のことである。(私学では学校法人などが設置者に当たる。)
確かに設置権限は、その費用負担の問題なども含め学校や教育委員会にある。しかし、重要なのは、その選任に至る経緯の中で、立法の趣旨が大きく影響することだ。

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