菅官房長官、杉田官房副長官らは、2013年から17年にかけ安全保障法制や特定秘密保護法、共謀罪といった個人の自由、人権にかかわる政策に対し、異を唱えた学者たちへの反感を強めていたと思われる。今回、学術会議会員の任命を拒否された6人もおそらく杉田官房副長官のもとにある内閣情報調査室のブラックリストに入っていたのだろう。
2017年の改選時は推薦通りに任命したが、菅政権になったからには、そうはいかぬというのだろうか。政府機関の一つである学術会議の会員人事に、首相たるものが関与できないはずはないという、あまりにも浅はかな考えが暴走した。そして、それを正当化するためにひねり出したのが、憲法の恣意的な解釈だ。
「憲法15条におけるですね、公務員の選任に当たっての国民主権等々の憲法規定もある中で…それを踏まえて私どもはこれまでも運用してきたところであります」(10月5日、加藤官房長官)
たしかに、憲法15条1項にはこういう定めがある。
公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
しかし、「国民」を「総理大臣」と読みかえることができるとでもいうのだろうか。
憲法43条には「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」と定められている。国民の代表機関は国会と考えていいだろう。ならば、国会が指名した総理大臣は国民の代表といえるのか。そんな規定は憲法のどこにも見当たらない。
主権者は「国民」である。その「国民」を「総理大臣」に置き換えて、やりたい放題できるのなら、国会も法もあったものではない。
就任早々、「改革」の美名のもとに、独善的な猛々しい牙をむきだした菅首相。一刻も早く心得違いに気づき、学術会議の違法状態を解消しなければ、携帯料金値下げなど、矢継ぎ早に打ち出した甘い政策も、本性から目をそらすための小道具としか思われないだろう。
image by: 首相官邸