元検事が暴くTBSの嘘。『朝ズバッ!』不二家叩きデマ報道との死闘全記録

 

「カントリーマアムをチョコレートと混同」という“苦し紛れの弁解”

BPO検証委員会は、TBSの取材テープを確認した。

その結果、私が想定していたとおり、「チョコレート再利用証言」は存在せず、カントリーマアムについての証言を流用した事実は確認された。

それにもかかわらず、TBSの証言の「すり替え編集」の捏造は認定しなかった。

追い詰められたTBS側が、

「担当者がカントリーマアムをチョコレートの一種だと勘違いした」

という「苦し紛れの弁解」、まさに「幼稚園児レベルの言い訳」をBPO検証委員会は丸呑みしたのである。

8月6日に放送倫理検証委員会が出した「見解」では、『朝ズバッ!』で放映したビデオ証言は、

「チョコレートではなく、クッキーの『カントリーマアム』についての発言であった」

と認定した上で、

「ディレクターは『カントリーマアム』がクッキーではなく、チョコレートを主体とした菓子であると誤解しており、比較的、要領よく語っている『カントリーマアム』についての発言を使い、放送用に編集した」

と述べて「誤解・過失」で片付けてしまった。

この「見解」を受けて、TBSは自社の検証委員会を立ち上げ、11月16日にその報告書が公表されたが、カントリーマアムの証言ビデオのすり替えの問題については、BPO検証委員会の認定に沿って、「担当者の混同による編集」ということで済ませるものだった。

私は11月27日に TBSの社長宛に、2通目の公開質問状を送付し、記者会見を行った。

質問の趣旨は単純であった。

「元従業員」が「チョコレート工場なのになんでクッキーが戻ってくるのか」と証言していた事実があるのか否かである。

その事実があるとすれば、それを聞いた担当者がカントリーマアムをチョコレートと誤解することはありえず、「意図的なすり替えの捏造」を否定する根拠が崩れる。

一方、その事実がないとすれば、3月25日の不二家・TBS会談の際に、コンプライアンス室長やプロデューサーは「真っ赤な嘘」をついていたことになる。

しかも、TBS側は3月28日の広報室長・コンプライアンス室長の会見でも同様の発言をしている。

いずれにしても、TBSのコンプライアンスの重大な欠陥を示す問題だった。

国会でのTBS『朝ズバッ!』追及

当時、国会で、事実に反する放送に対する規制強化を内容とする放送法改正案の審議が進められていた。

2007年12月4日の衆議院総務委員会での放送法改正の審議に参考人で呼ばれた私は、放送法改正に関して重要な事例だと思われるTBS『朝ズバッ!』の不二家関連報道の問題について経過を説明した上、証言映像の捏造の事実を否定するTBS側の対応を批判するとともに、捏造の有無を十分に検証しなかったBPO検証委員会の審理を厳しく批判し、次のように述べた。

私は、この問題、捏造の有無も極めて重要な問題だと思いますけれども、このように社会的にも非常に関心を集めた重大な、重要な問題に関して放送事業者の対応の中でウソがあったということが、それ以上に重要な問題ではないかと考えております。

 

そして、もう一つ大きな問題は、この問題はBPO検証委員会が立ち上げられて初めて審理の対象とされた事案だということです。BPOの検証委員会で審理が行われたにもかかわらず、このようなTBS側の説明のうそが全く見抜けなかったということでは、放送業界の自浄作用を発揮させるために設置されたBPOの検証委員会に、現状では十分な期待ができないのではないかと言わざるを得ないと思います。

 

私は、放送法の改正の問題に関しては、行政の放送事業に対する介入は極力避けるべきだと思っておりますし、この改正案の中の再発防止計画の提出の求めに関する部分、これをそのまま成立させることには反対です。しかし、だからといって何もしなくてもいいというわけではない、やはり放送事業者の自浄機能を発揮させるためにもっとBPOの検証委員会が機能しなければいけない。機能させるための方策を十分に講じた上で、このような行政の介入を認めるような内容の法案は削除するという方向が望ましいのではないかと思います。

 

とりわけ、過去にいろいろ、放送事業者の不祥事と申しますか、いろいろな問題が発生しております。

 

例えば、同じTBSでは、オウム事件の際の、オウム側に坂本弁護士の証言ビデオを見せたという問題、これがその後、坂本一家殺害事件の一つの原因になったというふうにも言われております。

 

この事件に関しても、最大の問題は、そういうような事実があるんじゃないかという疑いが向けられた後も、一切そのことを明らかにしようとしなかった、

 

それについて事実の解明に協力しなかったということが問題にされたわけです。

 

今回の問題に関しても、捏造の部分も非常に重要な問題ですが、それに加えて、問題が提起された、指摘されたときには、きちんと正直に話す、正直に事実を明らかにするという態度を貫いていただきたいと思います。

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