消えた4820万円。菅首相「総裁選に官房機密費を流用」説は真実か

 

今回、小池議員が具体的な数字をあげて官房機密費問題を取り上げることができたのは、2018年1月19日の最高裁判決があったからだ。

市民団体「政治資金オンブズマン」が第2次安倍内閣における約13億6,000万円の官房機密費支出などについて、関連する全文書の開示を求めていた裁判。最高裁は、関連文書のうち、「政策推進費」の受け払い簿の開示を認め、それまで「全面不開示」としていた国の処分を取り消した。

この最高裁判決が下るまで、国は官房機密費に関わるいっさいを秘密にしておくことができたのだが、「政策推進費」の受け払い簿の開示を最高裁に命じられたことにより、少なくとも官房長官のポケットに入った金額と時期を明らかにしなければならなくなった。

判決の2か月後にようやく開示された2013年1~12月の「内閣官房報償費出納一覧」によると、菅官房長官が受け取った政策推進費は、最高が3月の1億4,090万円、最低が5月の7,080万円、月平均では9,377万円だった。

小池氏の質疑を聞いていて虚しいのは、受け払い簿には官房長官がカネを何に使ったかの記載がないため、追及しようにも自ずから限界があるということだ。

官房機密費を好き勝手に使えるのが、総理や官房長官のいわば“役得”のようになってしまっているわけだが、菅首相が官房長官だった7年8か月の間に、自らに支出した「政策推進費」は約86億8,000万円にものぼる。月平均9,434万円、一日あたり314万円も使っていた勘定だ。

毎月毎月、何でこんな大金が必要なのか。国家のインテリジェンスに関わることなら納得もできよう。しかし、つねに同じペースで支出されているのは、不自然きわまりない。さして重要ではないことに官房機密費を充てているがゆえに、そうなるのではないか。

内幕を知り尽くす男が、このカネの使途をごく一部ながらメディアに暴露し、世間を驚かせたことがある。小渕政権で官房長官をつとめた野中広務氏。民主党に政権交代して間もない2010年春のことだ。

野中氏は、官邸の金庫から毎月、首相に1,000万円、衆院国対委員長と参院幹事長にそれぞれ500万円、首相経験者には盆暮れに100万円ずつ渡していたという。

衆参の国対関係者に機密費を配っていたのは野党工作のためだろうが、首相経験者への高額な現ナマ贈答は、単なる分け前としか思えない。

野中氏は「世論操作のため複数の政治評論家にカネをばらまいた」とも証言した。

「前の官房長官から引き継いだノートに、政治評論家も含め、ここにはこれだけ持って行けと書いてあった。持って行って断られたのは、田原総一朗さんただ1人」

「政治家から評論家になった人が、『家を新築したから3,000万円、祝いをくれ』と小渕総理に電話してきたこともあった」

なぜ野中氏がそんなことを暴露したかというと、新米の民主党政権への牽制というか、嫌がらせのようなものも含まれていたのだろう。「国民の税金だから、政権交代を機に改めて議論し、官房機密費を無くしてもらいたい」と、新政権に注文をつけた。

それだけ旨みがあるということだ。官房長官からもらったカネで銀座のクラブに通おうが、キャバ嬢に貢ごうが、表沙汰にならない。まことにありがたいカネなのだ。

2009年、自民党が衆院選で敗北し、政権交代が決まった2日後に麻生内閣の河村官房長官が2億5,000万円を引き出したというので、「駆け込み支出」だと物議をかもしたことがある。河村氏から誰と誰にカネが配分されたかはもちろんわからない。選挙資金の穴埋めか、などと諸説が乱れ飛んだが、要するに、その立場にある間に、もらえるものはもらっておきたかったということだろう。

加藤勝信官房長官は1月29日の記者会見で、菅内閣が国庫から支出した官房機密費が、昨年9月の発足から4カ月半で5億円にのぼることを明らかにした。このうち、政策推進費は約3億6,000万円である。あいかわらずのペースで使っている。

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