消えた4820万円。菅首相「総裁選に官房機密費を流用」説は真実か

arata20210204
 

1月末の衆院予算委員会で共産党の小池晃氏が追求した、菅首相が自身の総裁選勝利のため「官房機密費」を流用していたのではないかという疑惑。首相は即座に否定しましたが、総裁選のさなかに消えた5,000万円近くの機密費の使い道は明らかにされることはありません。この官房機密費の必要性に疑問を呈するのは、元全国紙社会部記者の新 恭さん。新さんは自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、今回の疑惑やこれまでの機密費を巡る数々の問題を改めて振り返るとともに、もはやこの予算は官邸利権の温床でしかなくなっていると強く批判しています。

菅首相が総裁選に官房機密費を流用?

昨年9月の自民党総裁選に勝つため、菅首相が内閣官房機密費を流用したのではないかという疑惑が今国会で浮上している。1月28日の参院予算委員会で、共産党の小池晃議員が追及した。

内閣官房機密費。正式には内閣官房報償費といい、2020年度一般会計予算では12億3,021万円が計上されていた公金なのだが、何に使おうが官房長官しだい、領収書いらずで、会計検査院もノータッチ。まるで裏金のような性格を持つ。

なぜそのようなカネを税金でまかなわねばならないのか、国会で疑問や批判の声が上がるたびに、政府が繰り返してきたのが、以下の説明だ。

「国の事務又は事業を円滑かつ効果的に遂行するため、当面の任務と状況に応じその都度の判断で最も適当と認められる方法により機動的に使用する経費」

いつもながら、分かりにくい文言である。要するに、国家にとって重要な何ごとかをなすために、素早く効果的に対応できるよう用意しておくカネということなのだろう。

さて、小池議員は、昨秋の総裁選当時、官房長官だった菅氏がその地位を利用し、官房機密費という公金を、自分の選挙のために流用したのではないかと疑っているわけだが、なぜそんなことを言い出したのか。

小池議員が主張の根拠としたのは、しんぶん赤旗が情報公開請求で入手した「政策推進費」の受け払い簿だ。「政策推進費」は、官房長官自身が金庫から出し入れするカネで、官房機密費の大半を占める。

受け払い簿によると、昨年9月1日、金庫に納められていたのは9,020万円だった。菅官房長官はその翌日、総裁選への出馬を表明した。臨時国会で菅氏が総理大臣に指名された9月16日、金庫に残っていたのは4,200万円。半月の間に、4,820万円が使われたことになる。これについて、小池議員は1月28日の予算委で次のように菅首相の見解をただした。

「総裁選に全力を集中していた時に、あなたは官房機密費を何に使ったのか。それほど重要な政策があったのか。総裁選のために使ったといわれても仕方がないんじゃないか」

何に充てるのか知らないが、官房長官は毎月、1億円近い機密費を要求し、金庫にしまい込んだうえ、ほとんど使い切っている。節約の美徳などという観念はまるでない。

だから、半月に4,820万円というのは、毎度のことではある。しかし、小池議員が言うように、多忙極まる総裁選のさなか、それだけの金額を支払い、官房長官としてどんな仕事をしていたというのだろうか。

「総裁選に使ったのでは」という小池議員の質問に菅首相が「そのようなことはいっさいありません」と反論すると、小池氏は「じゃあ、何に使ったんですか」とたたみかけた。

菅首相はそれには答えない。しばしの沈黙。やがて、加藤官房長官が菅首相の耳元で何かを囁いたと思うと、なぜか答弁席に出てきた。加藤氏には関係がないはずである。小池氏が「ちょっと、関係ない人出さないでくださいよ」と叫んだのは当然のことだった。

加藤長官 「いや、ですから、総理が総裁選に出ていても、政府全体としてはその時の課題に対応しているわけでありますから、当然そういうことに対して使用されてきたということだと思います」

わけのわからないごまかし答弁。小池議員は、吐き捨てるように言った。

「こういうときくらい使うのやめたらどうですか。総裁選に使ったと思われても仕方ない。国民には自助を押しつけて自分には莫大な公助を受けてきたのではありませんか。既得権益を打破するんじゃなくて、どっぷりつかってきたのが総理じゃないですか」

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