過去の自民党政権は、そのうえに、外務省から外交機密費の上納までさせてきた。上納は佐藤政権時代から始まったといわれる。
官房機密費を使いすぎて足りなくなり、佐藤首相は予算の増額を望んだが、やりすぎると目立つので、その分外務省に予算をつけ、秘密裏に官邸が横取りして、マル秘資金をふくらませた。それが長年の慣習になっていたのだ。
森内閣のころだったか、当時55億円といわれた外交機密費のうち20億円をそれまで毎年、官邸に還流させていたことがわかり、国会で問題になったこともある。
外務省の額が多いのは、在外公館における要人接待、情報交換、情報収集などに使うという建て前があるからだ。ところが、こういう資金は機密性をもつだけ裏金に化けやすい。検察や警察の調査活動費の私的流用問題も同じたぐいだ。
官房機密費については「情報収集の対価として支払う」という言い方もされる。しかし、単なる会食も情報収集と言い訳できないこともない。国家的な機密を要するような情報収集の仕事が、毎月コンスタントに1億円を使わねばならないほどあるとは思えない。
邪推すればきりがないが、安倍前首相が「桜を見る会」前夜パーティーの費用を自分の預金から補てんしたというのも、実は官房機密費から出ていたかもしれないし、公選法違反事件を起こした河井克行、案里夫妻に渡された1億5,000万円のなかに、この手のカネが紛れ込んでいないとは限らない。
官房機密費が必要なのかどうかを今一度考えてみなければなるまい。実態が、あまりに建て前とかけ離れ、官邸利権の温床でしかなくなっている。
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