日本で言えば「マツキヨで接種」の驚愕。米国のケタ違いワクチン戦略

 

ちなみに、米国では、大規模なロックダウンが去年から行われており、それがいまでも続いています。日本のように「休業要請」のような生やさしいものではなく、州政府からの「休業命令」がレストラン、コンサートホール、スタジアム、映画館などに言い渡されました。

人権や自由を重視する米国にしては、強引なことをすると最初は思いましたが、とても効果的でした。日本のように、県知事が日本政府に対して緊急事態宣言の要請をする、などもまどろっこしいプロセスが不要な、米国の「(州単位の)自治権の強さ」が発揮されたとも言えます。

日本のような「休業補償」のようなものはありませんでしたが、影響を受けた中小企業に対する支援は、連邦政府からありました。とは言え、多くのレストランや小売業が廃業にまで追い込まれたのは米国でも同じです。

今年に入って、各種ワクチンが緊急認可されてからの米国政府・州政府の動きも、素晴らしいものでした。

まず最初に、医療関係者(警察・消防、老人介護施設で働く人たちを含む)などに向けたワクチン接種をものすごい勢いで行いました。この時点でワクチンの接種会場となったのは、主に地域ごとの拠点となるホスピタル(入院施設を持つ大規模な病院)です。

米国政府のやり方は、米国政府が一括して入手したワクチンを、人口比で州ごと配布し、その先の接種は100%州に任せるというものでした。私の住むワシントン州では、そのワクチンが、それぞれの市町村のホスピタルにさらに分配され、そこから医療関係者への接種が行われました。

医療関係者への接種が一通り終わると、65歳以上の高齢者への接種が始まりましたが、この瞬間だけは少し混乱がありました。十分な数がなかったこともあり、どこの予約サイトに行ってもすぐに一杯になってしまったのです。「65歳以上なのにワクチンが受けられない」という声が聞かれたのもこのころです。後から考えてみると、65歳ではなく、一旦75歳以上に開放してから、徐々に年齢を引き下げるべきでした。

この段階では、接種会場の段取りも悪く、会場についてから申込書を書いたり、予約して行ったにも関わらず、1時間以上待たされた、などのケースも数多くあったようです。「予約しにくい状況」は、2月の中旬から3月の中旬の1ヶ月ほど続きました。

しかし、その状況も3月の後半に入ると大きく変わりました。ホスピタルの代わりに、ドラッグストア(薬局)などでワクチンの接種が始まったのです。日本で言えば、駅前の「マツモトキヨシ」のような場所での接種です。

大手ドラッグストアチェーンが各店舗でのワクチン接種を始めた結果、突如、予約がしやすくなり、一気にワクチンを受けた人が増え、対象年齢のさらなる引き下げも可能になりました。

CDCは、これを「Federal Retail Pharmacy Program Partners」と呼んで(Pharmacyは「調剤薬局」)、参加しているドラッグストア・チェーンの名前を公開していますが、Costco、Safeway、Walmartのように、「薬も売っているスーパーマーケット・チェーン」が全て参加しているため、その数は膨大です。日本で言えば、イオン、ダイエー、イトーヨカドー、ドンキホーテ、西友、ライフに相当する企業群です。

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