無知の知
GUの社長である柚木治さんは、現在の消費者の購買行動について強い危機感をもってこんなことを言います。
「本当に欲しいもの必要なものしか買わなくなった。ハードルが非常に上がっている。コロナが収束するかしないかにかかわらず、本当に欲しい服、必要なファッションを提供していかなければいけない」
という訳で「VOC(顧客の声)」が聞こえなけれならないのです。「本当に欲しい服、必要なファッション」の品揃えについては、“顧客層の欲求”にシンクロするゆえに、適切な意思決定ができ、かつ最も適切に情報発信が出来て、接客できる「おしゃリスタ」という“戦略的経営資源”の育成と活用こそが「差別化戦略」の要となるのです。
GUの社長の柚木治さんを親会社の柳井正さんは有望な人材として高く評価しているのですが、過去に興味深いエピソードがあります。ユニクロがおかした大失敗の野菜事業を企画・担当し、1年半で26億円の損失をもたらした当事者が柚木治さんなのです。その人を解雇せず、新事業の責任者にするのだから相当なものです。
柳井さんは、ドラッカーを相当深く読みこなしているようです。ドラッカーの2つの提言を並べるので吟味してください。
「第一級の人材は、最も大きな機会、最も大きな見返りのある領域に割り当てなければならない。そして第一級の機会に対しては、卓越した才能と実績をもつ人材を割り当てなければならない」
「間違いや失敗を犯したことのない者というのは、単に無難なこと、安全なこと、つまらないことしか、やってこなかっただけである。逆に優れている者ほど、数えきれない間違いを犯すものであり、これは常に新しいことに挑戦している証拠である」
柚木治さんは、こんなことを言います。「野菜事業で失敗するまでは、自分は優秀だと思っていた」と、そんな柚木治さんをGUの社長に起用したことについて、柳井さんは「柚木君が有望だから」とその理由を語っています。失敗によって「マーケティング」の真の意味を知った人材は貴重です。
GUの2020年8月期の決算をみると、売上は2,460億円で利益は218億円で、10年前の2010年は、売上450億円、損失15億円です。売上を5倍にし、利益率9%の優良事業に躍進させています。柚木治さんがGUの社長になったのは2011年9月からで、座右の銘は「無知の知」で「だからみんなの声を聞く」のだと言います。
今はパナソニックに吸収合併されてしまたのですが、三洋電機の創業者の「井植 歳男さん」は、こんな含蓄のあるあることを言っています、それは「ライバルはお客のこころである」
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