ユーザー視点が皆無。NTT株主総会で感じた“ドコモ子会社化”で失われたもの

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昨年末、NTTの完全子会社をなったNTTドコモ。同グループの国際競争力強化がその主たる狙いとのことでしたが、ユーザーにとっては手放しで喜べることばかりではないようです。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが、先日視聴したNTTの株主総会の模様をレポート。昨年まで行われていたドコモの株主総会とは打って変わって、「ユーザー視点」が皆無となってしまったことに対して苦言を呈しています。

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NTT株主が経営陣に「夢のある話をして欲しい」と苦言――NTTによるNTTドコモ完全子会社で失われたもの

今週、各社で株主総会が行われたが、やはりちょっと寂しさを感じたのがNTTドコモだ。NTTの完全子会社により株主総会自体が消滅してしまった。コロナ禍の前は、株主総会の夜にはメディアと経営陣との懇親会も実施されるなど、NTTドコモの経営陣と直接、お話しできる時間があったので、毎年、とても楽しみにしていたのだが、そんな機会もなくなってしまった。

NTTの完全子会社となり、NTTドコモの存在が遠くなってしまったように感じた。

NTTドコモの動向を知るという意味でも株主総会の取材をしつづけてきたが、今年、NTTからはNTTの株主総会の取材案内の告知が全く来ない。そこで、NTTドコモの広報さんにお願いして、なんとか、動画配信のURLを教えてもらうといった感じであった。

初めて、NTTの株主総会を視聴したが、やはり持ち株会社ということもあり、中身自体はとても薄味なものという印象が強かった。

NTTドコモの株主総会の場合、株主というよりドコモユーザー向けという位置づけが強い。「根っからのドコモユーザーによる経営陣に不満をぶつける場」「ユーザーの困りごとを相談する場」にもなっていた。いつからか、株式総会の会場には「相談コーナー」まで設けられ、スマホの使い方やドコモショップで対応してくれないことなどを受け付けるようにもなっていた。

持ち株会社の株主総会なので仕方はないのだが、NTT株主総会の場合、「ユーザー視点」が皆無のような気がしてならないのだ。

NTTドコモでは、ビデオを流し、スマホや通信回線が我々の生活をどう支えているか、どんなサービスを提供していくか、新しい技術がどのように我々の生活を変えていくか、わかりやすく紹介していた。

NTTの場合、そうしたユーザー視点の話はほとんどないのが印象的であった。株主からは「夢のある話をして欲しい」という質問が出ていたが、NTT経営陣はIOWN構想を軸にソニーやインテルと準備を進めているという回答にとどまっていた。個人株主が聞きたいのはIOWN構想によって、我々の生活がどのように便利に豊かになるかということなのではないか。IOWN構想を実現することで、NTTはGAFAよりも生活に欠かせない存在になるのか、という話を聞きたいのだ。

NTTドコモが完全子会社化したことで、メディアや株主、ユーザーに対して、NTTグループにおける顧客接点が薄れ、「生活者視点」での方向性が見えにくくなったように感じた。

NTTドコモを完全子会社化したのだから、NTTとしても、株主総会において、もう少し、個人株主に向けた、わかりやすいユーザー視点の説明が求められるのではないだろうか。

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image by: BjornBecker / Shutterstock.com

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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