5.世界第三位の国の生き方
それでも、日本は世界第三位の経済大国の地位を保っている。次々と主役となる産業が変化し、製造拠点は海外に移転したが、特殊な素材や部品、加工技術を維持することで、グローバルサプライチェーンの中で確固とした位置を占めることができたのである。
一位の米国と二位の中国は覇権を争っている。どちらの国も日本を見方につけたいはずだ。そして、三位の日本は安全保障では米国に、経済では中国に依存している。このバランスの中で我々は生きているのである。
これまで三カ国のバランスは比較的安定していたが、中国が自信をつけ、正面から米国に対抗するようになって壊れてしまった。
現在の状況はある意味で戦争状態であり、これまでの平時モードでは対応できない。常に周囲の状況を見ながら、変化に対応し、駆け引きしなければならない。
その意味で、ユニクロはあまりにも無警戒だった。無邪気にも中国の綿製品を米国に輸出したのだから。
ユニクロは中国生産に大きく依存している。そして、中国・韓国・日本市場、米国市場、欧州市場にも進出している。今後は、グローバルサプライチェーンではなく、欧米とアジアにそれぞれのサプライチェーンを構築する必要があるかもしれない。
とりあえず、綿花~紡績~織布のオペレーションの組み替えも必要だが、日本の綿紡績との連携により解決できるのではないか。
ASEAN、インドは、生産国としても、市場としても重要になっていく。脱中国を図りながら、更なる成長を期待したいものだ。
■編集後記「締めの都々逸」
「大国同士に 挟まれながら 独立独歩で 生きていく」
2021年、世界は戦時体制に移行するのではないか、と思っています。グローバリズムは、自由競争と法令遵守がなければ成立しません。中国はグローバリズムの恩恵を受けたのに、自らグローバリズムを破壊しようとしています。中国が考えるグローバリズムは、中国が支配する世界です。
結局、「グローバリズムはプロパガンダだったんだな」と、今では思っています。事実、日本はグローバリズムを推進して貧しくなり、中国は豊かになりました。
当たり前ですが、あらゆる国、組織、個人は、自らの利益を追求しています。その中で、日本人は少し特殊なのかもしれません。相手の気持ちを推しはかり、自分を犠牲にすることさえあります。これが利用されます。
平和な時代は良い人でいられますが、戦時ではダメです。あらゆることを徹底的に疑って、隙を見せてはいけない時代なのです。(坂口昌章)
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