低迷「モスバーガー」が奇跡の復活。エッジの効いた新商品で大逆転の舞台裏

 

挑戦で「モス離れ」を克服~バーガー以外のコラボも

モスバーガーの創業はマクドナルドが日本に上陸した翌年の1972年。創業者の櫻田慧は日本人の口に合う和のハンバーガーづくりに挑戦。そうしてできたのが、醤油や味噌を使った「テリヤキバーガー」だった。今でこそどこにでもあるが、1973年に日本で初めて作ったのはモスバーガーだ。

櫻田の次なる挑戦がパンの代わりにご飯を使った「ライスバーガー」。コメ離れが進む中、国から余った米を使って欲しいと頼まれ、開発したという。こうした他にない独自の商品を次々と生み出すことで、モスバーガーは躍進を遂げてきた。

ところが、そんなモスに異変が起き始める。24年間右肩上がりだった売り上げは90年代後半には頭打ちに。客数の低迷に歯止めが掛からず、利益が落ち込んでいった。

なぜそんな事態に陥ったのか。当時社長で現会長の櫻田厚は、創業時のチャレンジ精神を失っていたと振り返る。

「今まで右肩上がりで来ていたから、今のままでも売り上げは戻るという慢心や油断があったと思います」(櫻田)

定番商品に頼り、新たな挑戦をしなくなったモスバーガー。客が少しずつ減っていくことにも手を打てず、若者のモス離れを引き起こしていたのだ。

2016年、社長に抜擢された中村に託されたのは、モスバーガーの大改革だった。

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「もちろん定番商品が一番ですが、どうしても保守的に動いていた。思いっきり踏み込んでみようかと『これがバーガーなの?』『これがモスバーガー?』いう感じでやってみようじゃないか、と」(中村)

その言葉通り中村は挑戦を始める。見せてくれたのは社長になってから出した新商品だ。

焼きトマトやバジルソースを使った、その名のとおりの「マルデピザ」(2018年2月)。唇がまひするほどの辛さを売りにした「激辛テリヤキチキンバーガー」(2019年5月)。そしてエビ天までハンバーガーにした「海老天七味マヨ」(2019年9月)。これは噛んだ時のカリカリという音がウケて3ヵ月で290万食売る大ヒットとなった。

他にも人気の日本酒「獺祭」と組んで甘酒シェイク「まぜるシェイク獺祭」(2020年12月)を生み出すなど、挑戦的なメニューを次々に投入することで、中村は若い客を引き戻してみせたのだ。

常識破りの挑戦はハンバーガーにとどまらない。「UHA味覚糖」と組んだ「つむモスグミ」(410円)は、食材をかたどったグミを重ねると、オリジナルのバーガーが作れるというもの。食材宅配の「オイシックス」と作ったのは、モス自慢のミートソースを生かしたパスタソース。「ふとんの西川」とのコラボでマスクも作った。他業種とのコラボで、ハンバーガーの枠を超えた挑戦にも乗り出しているのだ。

2月中旬、モスの社内では初夏に向けた新商品の開発が進んでいた。担当するのは、日本料理の板前歴20年の商品開発グループ・荒木光晴だ。

「ハンバーガーはコース料理を一口で食べる感じ。食べた時に一番おいしくなるようにするのが難しいと思います」(荒木)

荒木が今回取り組むのは、刺身でもいける新鮮な真鯛。ハンバーガーに使うのはもったいないくらい。「ファストフードでこんなに立派な鯛を使えると思っていなかった」と言う。

わざわざ真鯛を使うのは、コロナで外食需要が減って困っている漁業関係者を応援するため。厚めに引いた鯛をフライにする。「白身魚は淡白ですが、水分を飛ばしすぎず、蒸し焼きになるように揚げるのがこだわり」(荒木)と言う。

野菜に大振りのフライを2つ。仕上げにレモンを効かせたタルタルソースを乗せる。国産の鯛を使った、これまでにないハンバーガーが完成した。試食した中村が言う。

「おいしい。やらないと結果はでない。失敗するかもしれないけど、一歩踏み込んで動いてみることを大切にしています」

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