昭和の「視聴率100%男」欽ちゃんこと萩本欽一の不思議な“家族関係”

 

貧乏な萩本家の“解散“を兄貴がいい出したのは…

貧乏な萩本家の解散を兄貴がいい出したのは、僕が高校を卒業した時だった。弟は高校生だったが、みんな成長した。

「これからはそれぞれで生きていこう」

一家離散といえば悲惨さ以外にないと感じるだろうが、当時の僕の中に暗さは少しもなくて。むしろ、貧乏な家から解き放たれて、家族みんながそれぞれ幸せを捕まえに行くんだと前向きな気持ちで、兄貴の言葉を聞いた覚えがある。

僕は家を出た。僕はそのまま、浅草の劇場に入って以来10年──。

芸人として、僕は二郎さんとのめぐり会いが大きい。二郎さんが運を持ってきてくれたという思いが強いね。

再び家族全員が集まったのは10年後だった。上の兄貴は親父の借金を返して店を持ち、下の兄貴は商社マン、姉さんも結婚をして、弟は学校の先生になっていて。

不思議とみんなそれなりの幸せを手にしていた。

「親父、何をしているときが一番幸せなの?」
「そうだね、競馬をやっているときか」

親父がそう言うから毎週土曜日、僕は5万円の小遣いをあげたの。

晩年の親父は、夫婦で一緒に暮らしていたが、

「なんだか新婚のときみたいで、すごく幸せ」

なんて、オフクロはほおを赤らめていた。オフクロのその言葉を聞いて、なんか僕は感激したんだよねぇ。

誰にも恨みを持たない。98歳になった母ちゃんの生き方──。

芸人としての僕の資質は100%、オフクロ譲りですよ。

(ビッグコミックオリジナル2006年8月20日号掲載)

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根岸康雄 この著者の記事一覧

横浜市生まれ、人物専門のライターとして、これまで4000人以上の人物をインタビューし記事を執筆。芸能、スポーツ、政治家、文化人、市井の人ジャンルを問わない。これまでの主な著書は「子から親への手紙」「日本工場力」「万国家計簿博覧会」「ザ・にっぽん人」「生存者」「頭を下げかった男たち」「死ぬ準備」「おとむらい」「子から親への手紙」などがある。

 

このシリーズは約250名の有名人を網羅しています。既に亡くなられた方も多数おります。取材対象の方が語る自分の親のことはご本人のお人柄はもちろん、古き良き、そして忘れ去られつつある日本人の親子の関係を余すところなく語っています。

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