一大疑獄事件に発展か。自民党が繰り返す「ネット工作」の汚いやり口

 

もし官邸なり自民党なりが、政治資金を投入してこの会社に投稿業務を請け負わせ、意図的に歪めた情報で世論操作をしようとしているとすれば、由々しきことである。

自民党だったら自民党の名を出して、オープンに野党を批判するのなら、民間業者を使っても、さほど問題はないだろう。だが、Dappiの場合、野党議員による国会質疑の趣旨を意図的に捻じ曲げるケースがあまりにも多く、ステルス性が高い。

こういう類の問題が起きると、内閣情報調査室(内調)の関与を疑いたくなるのが世の常だ。実際に、一般市民が、Dappiに関する文書の有無の確認と開示を内調に請求し、拒否されている。

内調は、公安警察、公安調査庁などと並ぶ情報機関だが、ありていに言えば、官邸のスパイ組織だ。情報操作、世論工作の部門があり、新聞、出版、テレビ、ネットなどのメディアごとに分かれて特命班が存在するといわれる。

安倍首相の親友が経営する加計学園の獣医学部新設疑惑をめぐり、重要な証言者、前川喜平氏が出会い系バーに出入りしていたと報じた読売新聞のネタモトは、前川氏の行動を以前からチェックしていた内調のリークであったらしいこともわかっている。

職務の性質上、われわれ一般人がその活動内容を知ることはできず、すべては推測の域を出ないが、裏を返せば、内調が何をやっていても不思議ではないということになる。

「テラスプレス」というサイトが、内調とのからみで話題になったことがある。2019年夏、参院選前のことだ。このサイトに掲載されている記事をまとめた冊子が自民党本部から党所属国会議員の事務所に大量に配られた。

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冊子の標題は「フェイク情報が蝕むニッポン トンデモ野党とメディアの非常識」。いわば選挙演説用の参考書としての利用を勧めているらしかった。

中身はというと、「トンデモ野党のご乱心」「フェイクこそが本流のメディア」「安倍政権の真実は?」の三章からなり、立憲民主党や共産党、朝日新聞と東京新聞をこっぴどく叩く一方で、当時の安倍政権のやることなすことすべてを持ち上げていた。安倍氏が毛嫌いする石破茂氏には敵対的であることも特徴的だ。

このサイトへの投稿が始まったのは2018年7月13日だが、同年8月6日の記事では、総裁選への出馬意向を固めた石破氏について、加計学園問題とからめ「獣医師の既得権益を守るために動いた」と批判している。総裁選を安倍氏が有利に戦えるように意図した記事であるのは明白だった。

運営主体をわからないようにし、当然、連絡もとれないようにしているが、総裁選で内調が安倍氏のために活動していたという噂が流れ、内調と「テラスプレス」との関係が疑われた。このアカウントの位置情報から、国会議事堂、首相官邸、霞ヶ関官庁街、自民党本部の周辺に発信源があることだけはわかっている。

万が一、政府機関である内調が、特定の政治家や政党の選挙対策に一役買っていたとすれば、大問題である。

自民党では、「ネット工作」が常態化しているフシがある。河井克行元法務大臣の疑惑は、2020年10月19日、妻、案里氏をめぐる公職選挙法違反事件の公判において検察側が朗読した供述調書で浮上した。

それによると、克行氏は、2019年の参院選で自民党二人目の公認候補として広島選挙区に出馬した案里氏を勝たせるべく、ネット業者に工作を依頼した。ネット業者は、架空の人物を名乗ったブログを運営、案里氏と争っていた自民党現職、溝手顕正氏のイメージを貶める投稿を繰り返した。克行氏が7選を果たした17年の衆院選でも、同様のネット工作が行われた。

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