世界的エンジニアによる「プレーすると理数系に強くなる」ゲーム考

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IT社会に順応した競争力のある人材を育てるために重要視されるSTEAM教育。STEAMはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の頭文字で、Artを除けば、大きく理数系と括ることができる分野と言えます。「Windows95を設計した日本人」として知られる世界的エンジニアの中島聡さんは、理系的な考え方の習得がいかに重要か身をもって知る一人で、今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、AmazonやYoutubeでも活用されている深層学習の手法を用いて、子どもたちに自然と理数系の力がつくゲームの開発について考えています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

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教育ゲームと人工知能

私には「作りたいものリスト」がいくつかありますが、そのうちの一つが「子供たちが遊んでいるといつのまにか知恵がついてしまうゲーム」です。

私自身は、子供のころにSF小説を読み漁った結果、科学に夢中になり、数学も応用問題が私にとっては「解くのが楽しくて仕方がないパズル」だったので、理数系の勉強に苦労した覚えはありませんが、そんな環境を自然に作り出すゲームを作れないかと何年も前から考えているのです。

先日、AmazonやYoutubeなどのウェブ・サービスがデータを活用してユーザーの行動を促しており、それが他の分野にも応用出来るのではないかプレゼンを聞いた時に、これがゲームに使えるのではないかと思いついたので、ここに書いてみます。

Amazonは、ユーザーの購入履歴や閲覧履歴を最大限に活用し、その人が買いそうなもの、クリックしそうなものを表示することにより、売り上げを最大化し、Amazonを多くのユーザーにとって無くてはならないサービスにすることに成功しています。

Youtubeは、ユーザーの視聴履歴を活用し、ユーザーが見たいだろうものを提示することにより、出来るだけ多くの映像をYoutube上で見てもらうことにより、広告収入を最大化しています。

ひと昔前までは、データサイエンティストと呼ばれる人たちが、集まったデータを活用して、最適な「お勧め」を作るアルゴリズムを手動で作っていました。それでもそれなりの良い結果が出てきましたが、深層学習によるニューラルネットワーク(人工知能)の教育が可能になって以来、「お勧めに対するユーザーの反応」を教育データとしてニューラルネットワークを順次改良して行くアプローチが取られるようになり、性能が格段に上がりました。

当初は特定の映像を見ようとYoutubeにアクセスしたはずなのに、ついつい他の映像まで見てしまった経験をしたことがある人が沢山いると思いますが、それはまさに、そんな人工知能のなせる技なのです。

これと全く同じことがゲームにも適用出来るのではないかと考えているのです。通常のゲームのように、全員に同じ体験を提供するのではなく、ユーザーのスキルや興味に応じて、最適化されたゲーム体験をユーザーに対して提供するのです。

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