10年で売上10倍の「焼肉きんぐ」、業界に革命を起こした大成功の秘密

 

取材から11年、その後を調査~あの店員が大出世

11年前、カンブリア宮殿では物語コーポレーションのお好み焼きチェーン「お好み焼本舗」で働く女性を取材した。当時26歳の蓼沼広実。若い社員の奮闘ぶりとして取材したのだが、その蓼沼はこの7月から、念願だった人財開発部へ配属、新人教育や採用活動に関わるという。蓼沼の学生時代の夢は教師になること。新たな仕事に期待が膨らんでいた。

「本当に自分がやりたかったこと。学校の先生ではないですが、この会社の中でできている感じはする。やっていて良かったと思います」

やはり11年前に取材し、「丸源ラーメン」で汗をかいていた当時28歳の宮井崇行も出世を遂げていた。

長崎県諫早市でオープンを控えていた「焼肉きんぐ」諫早貝津町店。店のスタッフたちを前に店長から紹介されたのが宮井だった。宮井は2020年、西日本の全店舗を任される焼肉事業部西日本ブロック長に就任した。プレジデントとしての店長時代の経験が自分を育ててくれたという。

「プレジデントになったことから、自分の価値観や判断基準が変わった自覚があります。とても大きな経験で、いろいろなものが背負えて、背負えたことで得たものが大きかった。何より挑戦する環境を与えてくれたことに感謝しています」

離職率が高い外食業界で、確実に成長する物語コーポレーションの社員たち。その中で、最大の成長を遂げたのが社長の加藤だろう。22歳で入社。物おじしない性格で頭角を表し、去年9月、コロナ禍の真っただ中に創業者の小林から社長のバトンを渡された。

この日、加藤が臨んだのはリモートによる就職説明会。そこで熱弁を振るった内容は自分の就職活動の物語だった。そして、「なりたい自分に向けて、本物の意思決定を自分がしないと、絶対後悔するよ」と、メッセージを送る。

創業者が紡いだ物語は、若き後継者に確実に受け継がれていた。

※価格は放送時の金額です。

~村上龍の編集後記~

小林さんが「うちには3万人の従業員がいる」と言うと、すかさず加藤さんが「2万人です」と訂正した。小林さんは「違うだろう、3万だろ」と2度抵抗したがダメだった。普通、72歳の創業者が大事な数字を間違うと、35歳の社長はこっそりと耳打ちするか、メモを渡すかする。だが、この会社はごく当然のこととして、目の前で、平気で訂正する。日本企業では極めて異質だ。常に謙虚でいたいと思うが、遠慮はしない、加藤さんの言葉だ。素晴らしい。

出演者略歴

小林佳雄(こばやし・よしお)1949年愛知県生まれ。1973年、慶應大学を卒業するが就職試験に全敗。1975年、母が営む「株式会社げんじ」入社。1997年、物語コーポレーションに社名変更。

加藤央之(かとう・ひさゆき)1986年、愛知県生まれ。2009年、神奈川大学卒業後、物語コーポレーション入社。お好み焼事業部事業部長などを経て、2020年、社長就任。

(2021年7月1日にテレビ東京系列で放送した「カンブリア宮殿」を基に構成)

 

254147232_316012703694602_8823022577465445200_n

テレビ東京「カンブリア宮殿」

テレビ東京「カンブリア宮殿」

この著者の記事一覧はこちらから

テレビ東京系列で毎週木曜 夜10時から放送。ニュースが伝えない日本経済を、村上龍・小池栄子が“平成カンブリア紀の経済人”を迎えてお伝えする、大人のためのトーク・ライブ・ショーです。まぐまぐの新サービス「mine」では、毎週の放送内容をコラム化した「読んで分かる『カンブリア宮殿』~ビジネスのヒントがここにある~」をお届けします。

print
いま読まれてます

  • 10年で売上10倍の「焼肉きんぐ」、業界に革命を起こした大成功の秘密
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け