深刻な鉄道車両内の“治安悪化”に専門家「鉄道警察隊を公費で投入せよ」の大胆提言

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1月23日正午ごろ、JR宇都宮線(東北本線)の雀宮―自治医大間を走行中の列車内や自治医大駅のホームで起きた、現役ホストによる男子高校生への暴行事件。優先席で寝っ転がりながら加熱式たばこを吸っていたホストの男に注意をした高校生が殴る蹴るの暴行を受けたというもので、ネットやテレビ等でも大きく取り上げられました。電車内でルール違反をしている人間に口頭で注意することの是非が議論となっていますが、車内トラブルが相次ぐ昨今、どのような「事前対策」をすべきなのでしょうか? 今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では、米国在住作家で鉄道関連に造詣の深い冷泉彰彦さんが、鉄道会社側の現状と、解決の大きな決め手となるかもしれない「大胆な対策」を提言しています。

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※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年2月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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鉄道車内の治安維持、決定的な対策とは?

1月23日にJR宇都宮線(東北本線)の下野市付近を走行中の電車内で喫煙行為を注意した男子高校生が、車内そして自治医大駅構内で暴行を受け大けがをするという事件が発生しました。

この事件については、勇気を持って注意した人を「無茶だ」とする批判があり、凶暴性のありそうな人物からは「スルー」つまり「逃げるのがデフォルト」という意見が多く出ています。

事件の報道を聞いて、私はまるで90年代当時に勤務していたニューヨークのオフィスでの会話が重なるのを感じました。

私の会社にテキサスから転職してきた気のいい「カウボーイ野郎」がいたのですが、彼は「昨日、地下鉄で変な男が女性に絡んできたので、コラって言って追っ払ってやったんだ」と自慢したのです。

その瞬間に、オフィスの空気が凍ったのでした。同僚たちは、「悪いことは言わないから、そういうことは止めた方がいいよ」とか「NYは銃は少ないかもしれないけれど、ヤク中で無意識のうちにヒドいことする奴もいるし、まずは自分の安全を優先に考えないと」などと口々に「気のいいカウボーイ野郎」の非難を始めたのでした。

トドメを刺したのはある女性の一言でした。

「貴方には奥さんも子供もいるんでしょ。幼稚な正義感から家族を悲しませるのは正義じゃないわ・・・」

そうです。アメリカでは沈黙よりも、厳しい言葉で空気が凍るという方が多いのでした。それはともかく、このエピソードは「NYの怖さを知らない、気のいいテキサスのカウボーイ野郎が学習した話」ということになったのでした。

今回の栃木県での事件は、そんなわけで私には「日本の治安悪化」という問題として相当にシリアスに考えないといけない、そんな風に思われたのです。

鉄道車両内の治安の悪化ということでは、考えてみれば、ここ数年の間でも、

  • 2015年の新幹線放火自殺巻き添え事件
  • 2018年の新幹線車内殺傷事件
  • 2021年の小田急線車内刺傷事件
  • 2021年の京王線車内刺傷事件(「ジョーカー事件」)

など、走行中の鉄道車内における凶悪事件は増えています。

こうした事件への対策ですが、まず進行しているのが防犯カメラの設置です。こちらに関しては現在、かなりのスピードで設置が進んでいます。問題は、新造車両ではなく、既に営業キロを重ねている車両を改造して設置する場合で、ワイヤーをきちんと通す改良工事が難しいことが問題となっていますが、場合によったら5Gなどを併用して進めることになるかもしれません。

しかしながら、防犯カメラは事件後の解析には有効ですが、問題があります。それは抑止ということでは限界があるからです。どういうことかというと、そもそもは防犯カメラがあるので「犯行がバレて本人が特定される」という「可能性」があるということで、犯行を思いとどまるという効果が期待されていたからです。

けれども、俗にいう「無敵の人」とか「拡大自殺」の場合は、そもそも犯行後に逃亡することは真剣に考慮されていないので、事後に露見する可能性が抑止にならないわけです。

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