全国の高校の4割にあたる2000校が利用。リクルートの「スタサプ」が起こした教育革命

2022.08.08
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学校向けのサービスの萌芽

スタサプが個人向け事業で産みの苦しみを味わっていたこの期間に、早くも学校向けの事業の萌芽が生まれている。2012年にスタサプのTV広告を見た岡山県の高校から、学校で利用できないかという問い合わせがあった。この学校では、先生たちの働き方改革に取り組んでいた。その一環として、個別対応をしようとすると先生たちの負担が大きくなる補習に動画授業を活用できないかと考えたのである。

スタサプにとっては、想定外の利用方法だったが、やってみることにした。希望者を対象に自習室で動画を見られるようにしたところ、「役に立った」「成績がよくなった」といった反響を得ることができた。

この結果を踏まえてスタサプは、2013年の春に全国の高校150校ほどに営業をかける。20校ほどから受注できたという。とはいえ、この当時のスタサプは、立ち上がったばかりの小さな事業で、10人程度のチームで運営していた。開発メンバーが営業担当を兼務する状態であり、専属の営業部隊が用意されていたわけではない。

そのなかでスタサプがねらっていたのは、個人向けの事業の育成だった。この個人向け事業が、ようやく成長軌道に乗りはじめたタイミングである。スタサプは個人向け事業の拡大に向けて、講座の充実やプロモーションの強化などのマーケティング施策に力を入れていた。

学校向け営業の本格化

当初は個人向け事業のかげに隠れていたスタサプの高校への導入が広がっていったのは、2014年の「到達度テスト」の開発以降である。スタサプでは、つながりのできた学校の先生たちから、スタサプの利用上の課題の聞き取りは続けていた。スタサプの運営チームは小さく開発と営業の担当も未分離だった。その分、顧客対応のフロントでつかんだ課題をすばやく開発テーマに取り上げるような小回りがきいた。

そのなかに、模擬試験の結果がうまく学習指導に活用できないという声があった。模試は、個々の生徒の学習到達度を把握し、志望校への合格可能性を判定するためのテストである。個々の生徒の学習のつまずきが、どの科目のどの単元で生じているかを把握するためのテストではない。そのために、模試の結果を受け取るだけでは、スタサプのどの講座のどこからどのような順番で復習をはじめればよいかはわからず、個別最適な学習につなげることができずにいた。

そこでスタサプは、生徒の学習のつまずきが、既習範囲のなかのどこで生じているかを把握するためのテストとして、2014年に「到達度テスト」を開発した。さらに2015年には先生向けに、宿題の配信や学習履歴を効率的に管理するする学習管理システムの開発も行った。このシステムを使えば、先生は40人の生徒に向けて、到達度テストで明らかになった課題に応じて、40通りの宿題を、ボタン一つで配信できる。

デジタル×アナログのサポート

個人向けの教育サービスを、学校でも利用してもらう。その程度の位置づけだったスタサプの学校向けの事業だが、到達度テストや学習管理システムなどの学校向けのサービスの充実を受けて、全国での組織的な営業を本格化する。反応はよく、採用は順調に伸びていった。2016年にはスタサプを採用する高校は1,000校ほどに広がる。

順調に見えた成長の陰には課題もあった。一度は導入するが、翌年の採用は打ち切るという学校が3割ほどあったのである。スタサプがデータを分析してみると、先生が宿題を多く配信している学校ほど、継続率が高まるという関係が示された。逆にいうと、学習管理システムが使わなければ、離脱が進む。

システムがいかに優れていても、使ってもらわなければ、価値は生まれない。そこでスタサプは、営業担当者の評価の指標を変えた。売上げだけだったKPIに、導入後の学校での学習管理システムの活用度も加えたのである。営業担当者は、スタサプを導入した学校を定期的に訪問し、システムの使用方法の説明をしたり、データの分析などを踏まえてコンサルティング的な提案をしたりする取り組みをはじめた。

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