G20からのプーチン排除に失敗した米バイデンが見誤る世界の実状

 

困ったのがバイデンで、まさかG20をボイコットしてプーチンのやりたい放題を許すわけには行かない。そこで考えた次の一手は、ウクライナのゼレンスキーをリモートで参加させて発言させることで、そうすればプーチンはいたたまれずに会議そのものをスキップするかもしれない……。

しかしワシントンでは、バイデン政権に好意的な人々の間でも、このような対決的なやり方は効果が薄いと見る人たちがいる。例えば、オバマ政権の国防長官やCIA長官を務めたレオン・パネッタはブルームバーグTVのインタビューに答えてこう言った。「もし、最終的にロシアや中国と戦争をしたいのでなければ、お互い同士の対話への意志を通じて問題解決を図るしかない」と。

もはやG7よりG20、さらにはBRICSか?

G7は、1970年代のニクソンショック、石油ショックという大変動のなか、75年に米英仏独伊日の6カ国による「第1回先進国首脳会議」として始まり、翌年の第2回からカナダが加わってG7となった。冷戦終結後の1990年代に、米クリントン政権や英ブレア政権がロシアのエリツィン大統領の経済改革を支援し、またNATOの東方拡大に対するロシアの不安を和らげるなどの思惑から、98年の第24回英バーミンガム・サミットでロシアを正式メンバーに迎え「G8」となった。

ロシアは先進国の範疇には入らなかったので、この時から「主要国首脳会議」と呼称が変更された。ロシアは2013年まで参加し、14年にはクリミア侵攻を理由に資格を停止されたので、その年からまた「G7」に戻った。とはいえ、カナダを除く6カ国とロシアは20世紀前半までの帝国主義時代の「列強」で、そこにG7/G8の本質的な限界があるというのも1つの見方である。

実際、なぜロシアが入るのに興隆著しい中国は入らないのかは理屈では説明がつかず、その辺りから「G7/G8無用論」も語られるようになり、2008年リーマンショックによる金融大崩壊の最中、「G20サミット」が創設された。これはG7プラス12の有力な途上国、国際機関として欧州連合・欧州中央銀行の20カ国・機関で、いわゆる先進国だけでは世界経済の運営を語り尽くせなくなった時代の到来を象徴する。

となると今度は、いっそのことG7を抜きにした有力な途上国だけで語らう枠組みが有効ではないかとする考えが広がり、G20の始まりの翌09年にはロシア主導でブラジル・ロシア・インド・中国の「BRIC」が、11年の中国開催のサミットでは南アフリカが加わり「BRICS」が成立した。さらに今年6月23日にサマルカンドで開かれたサミットでトルコ、イラン、アルゼンチン、サウジなどが加盟を検討しており、近々「新BRICS」8~9カ国となる方向が示唆された。

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