京セラを離れても生き続ける。稲盛和夫が怠らなかった「コンパ投資」

 

コンパでは、最初から最後まで仕事の話をするそうです。中には、「もっと残業代出してくれ!」と社長に直談判する社員もいたとか。人間関係がパサパサとしたものになりがちな時代だからこそ、仲間として語り合うことを大切にした。職場では決して見せることのない上司のちょっと崩れた人間臭さに、救われた社員もいたかもしれません。

世間では「でもさ、なんやかんやいってJAL再建でリストラしまくったじゃない」という意見もあります。しかし、稲盛さんは6,000社に協力を依頼し、リストラした社員の就職先探しに奔走しました。リストラした社員は1万7,000人に上ります。

170人だけは、その社員の個人的な理由で再就職しませんでした。しかし、会社を去った人たちには、十分なリストラ手当が支払われ、家族が路頭に迷わないように、できる限りの誠意を尽くしたとされています。

むろんリストラされた方の中には、「なんで私が?」と釈然としない気持ちで去っていった人もいたと思います。しかし、その人たちがいたからこそ、今のJALがある。経営者は「流れた血」を決して忘れてはいけないし、少なくとも稲盛氏はそれを請け負う覚悟を決めいていた。私にはそう思えてなりません。

稲盛さんの経営者としての覚悟と責任を、改めて痛感した記事が、6日付の日経新聞に掲載されていました。稲盛さんと共にJAL再建に尽力した、JALの植木義晴会長(現在)のコメントです。

植木氏は利益を出すことにこだわる稲盛さんに対し、“コンパと呼ばれる議論の際”に、「公共交通で一番大切なのは安全。利益を出すのは難しい」と意見したそうです。それに対し稲盛さんは、「安全にお金はかからないのか。その金は誰が払ってるんだ?」と問い、「お金は他人が払うんじゃない。自分が生み出す利益から生み出すんだ」と答えたといいます。

コンパは京セラを離れても生きていた。コンパ部屋がなくても、生きていた。会社と社員、上司と部下、社員と社員、会社と顧客…それぞれを正しくつなぐことへの“投資”を、絶対に怠らなかったことが、稲盛さんを名経営者たらしめた本質なのかもしれません。

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image by: Science History Institute, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

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