地下鉄は安全か? 大都市の地下空間について考える
関東大震災当時の東京と現代の東京で、大きな違いが2点あるかと思います。1つ目は高層建築物の圧倒的増加です。大正12年の関東大震災ではいわゆる「十二階」と呼ばれていた浅草・凌雲閣が8階より上が倒壊してしまいました。その後、東京都心では今日の建築基準法の前身・市街地建築物法により、関東大震災の教訓を生かして市街地の建物の高さは100尺(31m)に制限されていました。そのため旧丸ビルに代表される丸の内のビル群はこの高さに制限されていました。
昭和38年(1963)7月、建設省は建築基準法の改正がなされ、一定の条件を満たせば、高さ100m以上の高層ビルも建築可能となったのです。その第一号が霞が関ビルでした。
高層建築では、地表より大きな揺れとなる事は比較的よく知られるようになったかと思います。また長周期地震動が現代社会では大きな問題となる事もわかっています。
それに対して地下街とか地下鉄はどうなのでしょうか。理論的には地震工学の分野では、地表が存在する事により、地下より揺れの大きさは2倍となるのです。この計算は空間に対してどれくらいの割合が空中か地中かという事が関係しています。横から見た空間の角度は360度です。それに対して平らな地表面は2次元的には180度となります。そのため、360度÷180度=2 となり、地表では地下の2倍の増幅率となるのです。
次にがけ地形を考えてみます。最も単純ながけ地形は90度で表せます。これは90度 になります。このようながけの増幅度は 360÷90= 4倍となるのです。つまり単純ながけ地形の角では同じ地震でも地下に比べて揺れは4倍になります。同様に山の稜線で地震に遭遇すると、同様の理由で揺れは4倍以上になる事もあるのです。
一般に“地下は揺れない”というのは地震学的には正しいのですが、問題は地震による停電や揺れの影響で、防水壁や防水扉が正常に動作するかという問題が残されています。東京も大阪も地下鉄のみならず地下街が非常に発達しています。これらの施設が水没する可能性が存在するという事を我々は考えておかねばなりません。(以上、9月1日発売『巨大地震列島』長尾年恭・著 ビジネス社刊より一部抜粋)
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