スマホ「欲しくても買えず」の異常事態。物価高で購買力低下、半導体在庫はどこへ

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新型コロナウイルスの感染拡大が始まってしばらくすると、半導体不足が騒がれました。しかし、いまではスマートフォンに関わる半導体は供給過剰と言える状況にあるようです。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんは、世界的な物価高によりハイエンドスマホが売れなくなってきたことを半導体の供給過剰の原因の一つとしてあげます。さらにそれによって、次々と新製品に取って代わっていたAndroidスマホの売り方にも変化が生じ始めていると伝えています。

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コロナ禍で半導体不足が起きるも、買い控えで一転、供給過剰に──ハイエンドスマホが長期間、販売される傾向が強まることに

世界的に半導体不足が起きているかと思いきや、実はいまでは在庫が過剰になりつつあるようだ。新型コロナウィルス感染症拡大により、世界的にロックダウンとなったのは2年半も前のこと。工場や機械が停止を余儀なくされる中、クアルコムは必死にチップ製造の調達をあちこちで行っていた。カトゥージアン氏は「メーカーから供給してくれと何度も言われ、調達に翻弄された」と語る。

実際のところ、日本でも新製品が発売されたものの、数ヶ月後、すぐに後継機種が登場するというスマートフォンもあったくらいだ。新製品を発売する段階でチップ不足が確定しており、外観などはほとんど変わらず、なんとか新たに調達できたチップに切り替えるということをしていたのだ。

しばらくの間、半導体不足は続いたが、調整が上手くいき、なんとかメーカーからの要求を満たせるようになった途端に、ロシアによるウクライナ侵攻が勃発。世界的に不況となり、インフレが進行、GDPが減少している。これにより、消費者の買い控えが起きてしまった。日本では円安の影響もあり、スマートフォンも売れなくなった。結果、「供給過剰となり、在庫が積み上がってしまった」(カトゥージアン氏)という。

ハイエンドのスマートフォンが売れない中、クアルコムや端末メーカーは、ひとつの製品を長い期間、販売するという方向性を模索しているようだ。

現状、市場での最新チップはSnapdragon 8+ Gen 1となっているが、アメリカのキャリアであるベライゾンやAT&T、Tモバイルのサイトを見てみると、2~3年前の機種、Snapdragonで言うと888を搭載したモデルも普通に販売されている。日本ではすぐに在庫を処分しようとするが、アメリカでは長い期間、販売することで、価格を下げて、ハイエンドでも手に取りやすいようにしているようだ。

その点、アップルはiPhone 14シリーズを発売しても、iPhone 13シリーズやiPhone 12シリーズも普通に買えるし、むしろ、価格を下げて手に取りやすいようにしている。iPhoneは長く作り続けることで、部品も発売時よりも安価に調達できるようになるため、結果として本体価格を下げることができる。

Androidスマートフォンでも、同様に販売期間を長期化させつつ、ハイエンドを値下げして買いやすくする策がとられるようになるようだ。

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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