ウクライナが米国の停戦案を拒否。戦争の長期化必至で歪む世界の均衡

 

バクムット・ドンバス方面

ロ軍の砲撃数が、400件に上り、ものすごい量の砲撃が行われている。砲弾には半導体が必要ないので、生産量をそれなりに確保しているようである。ヘルソン州に回していた砲弾も入り、兵站もしっかりしているので、全盛期に近い感じの勢いである。

ヘルソンから撤退した精鋭部隊を投入している。機甲部隊も投入して、この地域を占領したいのである。

とうとう、この地域の主力は、ワグナー部隊とチェチェン部隊になり、正規ロ軍の動員兵は、この部隊から、「さっさと塹壕に戻って死んで来い!」と脅されて、前線の塹壕に送り出されているという。

脱走を試みると、拷問が待ち受ける。動員兵は悲惨な状態のようである。この方面の所々に、ロ軍兵の死体の山ができているという。

これは、ロ軍兵は、最前線で生き残るために味方の遺体の隣に隠れて蛸壺を掘ろうするが、銃弾か砲弾の破片が飛んできて倒れ込み、それが数回または複数人でやると一回で小山が出来るという。

そして、冬になり、低体温症になっているのか、蛸壺に複数人数が固まっている所に銃弾が当たっても動かないようである。冬に向かいロ軍動員兵には冬服の支給がないようである。戦闘もないのに、死亡している動員兵もいるようだ。

このような状況を見て、ベン・ウォレス英国防長官はウクライナに対し、冬の間も「圧力をかけ続け、勢いを維持して」ロ軍への攻撃を続けるよう促している。ロシア軍の冬装備がいかにも貧弱だからだ。

それと、ロ軍の第155海軍歩兵旅団は、パヴリウカ戦線で3か月の間に死傷者900名を出し戦闘能力を喪失したとのことである。死者は400~500名とされ、負傷者より死者が多いか同等という状態であり、ロ軍の第一線救護や後送能力の低さを物語っているようだ。

人命軽視で、損耗を増やして、そのため、次々と動員兵の補給も行わないといけなくなる。

ロシアの損耗は、ウ軍の発表では戦死者数は8.5万人にも上り、負傷者数は戦死者数の2倍としても、25万人の損害になるが、クレムリンは、動員兵士の回復不能損失が来年夏までに10万人に達するとの予測している。

FSBに近い関係者は、「大雑把に言うと、とりあえず時間を稼いで、動員された人の力を借りて戦線を安定させるというプランです。そして、春になったらまたやり直すんだ」と言う。

ということで、今後も戦死者数はうなぎ上りに増えることになりそうだ。春までには9月下旬の30万人動員兵の3人に1人が死ぬことになる。ということで、春までには、次の動員兵を必要になる。

ロ軍指導部は、ウクライナでの戦争に勝利するためには500万人の動員が必要だという。総動員令でしか達成できない。ロシアの総人口は1億4,000万人で、労働人口は50%の7,100万人であり、その内、男性は3,500万人で、男性労働人口の15%弱を動員することになる。

それでも、プーチンは、負けを気にせず戦う覚悟であり、プーチンが、政権の放棄または死亡などで辞任しない限り、戦争は継続することになる。

反対に、ウクライナの大統領府顧問ミハイロ・ポドリャク氏は「戦場で主導権を握っている時に『軍事的手段ですべてを片付けることはできない。交渉が必要だ』と提案されるのは理解に苦しむ」と発言。そうした提案は「領土を奪還している国に対し、敗北している国への降伏を迫る」のと同じだと付け加えた。

というように、米ミリー統合参謀本部議長の停戦交渉をするべきという見解に、反対している。一方、ロシアは2月24日以前の線までの撤退での停戦を視野に準備したが、停戦条件がウクライナ全土からの撤退というので、それを飲むことはできないことになっている。

そして、何年にもわたる戦いになる。

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