加速するプーチン離れ。集団安全保障条約機構で高まるロシアへの不満

 

アルメニア、不満の背景

NATOの実態は、トランプさんがいっていたように、「アメリカが他の全加盟国を守る」ということでしょう。同じように集団安全保障条約機構(CSTO)は、実質「ロシアが、他の全加盟国を守る」というものです。

ロシアは、CSTOで旧ソ連圏の影響力を保つことができる。他の加盟国は、ロシアに守ってもらうことができる。一応、「WIN-WIN」の関係ができあがっていたのです。

ところが、最近問題が多くなっています。ロシアは2月24日、ウクライナへの侵攻を開始しました。現状劣勢で、他のCSTO加盟国を助ける余裕はないようです。

たとえば。

CSTO加盟国のアルメニアと、CSTO非加盟国の旧ソ連国アゼルバイジャンは、ナゴルノ・カラバフの領有権をめぐって対立をつづけています。2020年にも戦争がありましたが、2022年9月にも再燃したのです。ニューズウィーク9月20日を見てみましょう。

ロシアとウクライナの戦争が泥沼化するなか、旧ソ連国のアルメニアとアゼルバイジャンの国境紛争が再燃している。

 

係争地ナゴルノ・カラバフをめぐって対立してきた両国軍が、9月12日から13日にかけて国境地帯で再び交戦状態となり、双方合わせて数十人が死亡。アルメニアのパシニャン首相は13日、ロシアのプーチン大統領と電話協議をし、ロシアと旧ソ連構成国によるロシア主導の集団安全保障条約機構(CSTO)に紛争への介入を申し入れた。

パシニャン首相は、CSTOの介入を求めました。当然ですね。そのためのCSTOですから。

ところが、CSTOの事実上の支配者であるロシアは、2020年のナゴルノ・カラバフ紛争時に、同盟国アルメニアを見捨てた過去があります。

2020年9月にも、ナゴルノ・カラバフ地方で両国の大規模な軍事衝突が勃発。この際もCSTO加盟国であるアルメニアはロシアに介入を求めたが、ロシアは軍事介入せず中立を維持し、トルコの支援を受けたアゼルバイジャンが事実上の勝者となった。

 

今回、アルメニア国防省はロシアが「状況を安定させる」ため協働することに合意したと発表。ウクライナで苦戦するロシアにアルメニアを助ける余力はあるのか。

さて、ロシアとロシアが支配するCSTOは、アルメニアを助けたのでしょうか?今回も助けなかったのです。結果、アルメニアでは、「役に立たないCSTOから脱退しろ!!」という大規模デモが起こりました。アルメニアがCSTOにいても、ロシアは助けていないので、近い将来脱退する可能性がでてきています。

こういう背景を知った上で、あらためて日テレニュース11月24日の記事に戻ってみましょう。

プーチン大統領は23日、ベラルーシやアルメニアなど旧ソ連圏6か国の軍事同盟であるCSTO(=集団安全保障条約機構)の首脳会議に出席しました。

 

この中でアルメニアのパシニャン首相は、隣国アゼルバイジャンとの衝突にCSTOが介入する役割を果たさなかったと不満を述べ、一部の合意への署名を拒否しました。

アルメニアのパシニャン首相が署名を拒否した理由がわかるでしょう。

ちなみに、プーチンがアルメニアをサポートできない理由は、ウクライナ問題以外にもあります。アルメニアと戦ったアゼルバイジャンの背後にはトルコがいます。トルコが、アゼルバイジャンにドローンを提供した。そのドローンが、アルメニアの戦車部隊に壊滅的打撃を与えた。そして、そのトルコのエルドアン大統領は、ロシアとウクライナの仲介役をリアルにしている唯一の人物です(一方で、ウクライナ軍にドローンを提供する狡猾な側面もあります)。プーチンは、独裁者仲間で影響力のあるエルドアンのトルコと対立したくないのです。

ま、アルメニアにとっては、そんなことは知ったこっちゃありません。「ロシアは義務を果たしてくれ!」ということですね。

print
いま読まれてます

  • 加速するプーチン離れ。集団安全保障条約機構で高まるロシアへの不満
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け