「おかげさま」と「もったいない」という言葉に込められた日本神話の世界

People who worship at temples in the New Year/In Japan, go to worship in the New YearPeople who worship at temples in the New Year/In Japan, go to worship in the New Year
 

私達が何気なく使っている言葉の中にも、実は深い意味が込められているものがあります。今回のメルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、日本最古の神社の宮司さんのお話を紹介しながら、日本人に息づく神話の世界について語っています。

「おかげさま」と「もったいない」何気ない日本語に込められた深い意味

奈良県天理市に佇む日本最古の神社の一つ、石上(いそのかみ)神宮。宮司の森正光さんと、同市出身で遺伝子工学の世界的権威であった村上和雄先生〈筑波大学名誉教授/故人〉のお話からは、日本の歴史の懐の深さがじんわりと伝わってきます。

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村上 「神様をお祭りしている時の境地というのはどんなものですか」

森 「どんな境地かと言われると、そうですね……。もともとの時代というか、祭りが始まったその時代に戻ってますね」

村上 「その時代に戻る?」

森 「例えば、毎年10月15日には年間で最も重要な『例祭』という祭があります。

この祭りは白河天皇在位の永保元年に始まったものですが、その祭りを真剣に奉仕していると、平安時代の終わりくらいのところまでタイムスリップするといった雰囲気になるんですよ。我われのご先祖も代々奉仕してきたわけで、祭りの度にその当時と同じ空間に立つことができると言ってよいかもしれません。

もっとも、そういったことは肌で感じるだけであって、実際に奉仕している時には、余計なことは何も考えていません。ただ、これだけは言えるのは、拝殿という建物の中で過ごしている時には、何となく原点に返るという感じになるということですね。それだけに、その祭りが厳粛なものであればあるほどに、終わった後にはほっとします」

村上 「一般的に宗教には教祖様がいて教義があるわけですが、神道にはそういったものがないだけに、いまおっしゃったようなことが感じられるのかもしれませんね」

森 「よく言われることですが、神道とは信じるか信じないかの世界であって、言葉を変えれば、感じる宗教であると。何となく境内に入って、『あぁ、神々しいな。ここにはきっと神様がいはるんだ』といった感じです。

私たち神職にとっては、見えない世界を信じることが何よりの役目だと言ってもよいと思います。

神様とか仏様にしてもそうなんですけど、目には見えない。見えないけど、実際にはいる。それが見えないからといって、神職がその存在を信じなければ話にもなりません。

だから、信じることからすべてが始まる。先ほど肌で感ずると申しましたが、もっと言えば五感すべてで感じるようなものを持ち合わせていたいものですね。

『古事記』や『日本書紀』に記されている神話についても、そういった感覚で接することが大切なのではないかと思います」

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