なぜ、本物志向の洋服を着れば着るほど日本人はダサくなるのか?

Mannequin with basted jacket by a tailor
 

4.熱帯スーツ、砂漠スーツの可能性

世界で最も通じる英語とはどんな英語でしょうか。イギリス英語でしょうか。それともアメリカ英語でしょうか。正解はブロークン・イングリッシュです。訛りのある拙い英語が最も分かりやすく、実質的な世界標準になっています。

これと同じことが洋服にもいえるかもしれません。人口が増加しているのはヨーロッパのような「寒くて乾燥している地域」ではありません。むしろ、高温多湿な地域、あるいは、高温乾燥の砂漠のような地域です。こうした地域では、日本人が体験し改善した日本製スーツの方が、ヨーロッパ製のスーツより快適なのではないでしょうか。

そこで、本気になって熱帯スーツ、砂漠スーツを開発してみてはいかがでしょうか。

例えば、インドネシアでは長袖のバティックシャツは正装とされていますし、ハワイではアロハシャツが正装です。

これらのシャツスタイルを日本のテーラーの技術でスタイリッシュに仕立てるのは、いかがでしょうか。

共の生地で一重のテーラードジャケットも作っておけば、アンサンブルでも着られます。昼間はシャツスタイルで夕方以降はジャケットと合わせるという着こなしも可能になります。

日本には伝統的な色柄がありますし、手捺染からデジタルプリントまで、プリント技術は多彩です。事前のリサーチを行った上で、日本のプリントテキスタイルを使うことで、現地のものと差別化することが可能になるでしょう。

プリントシャツに合わせるパンツも重要です。現地のものをリサーチした上で、必要に応じてアレンジするのが良いでしょう。また、こちらも日本製の機能素材等で制作すると更に付加価値が上がります。

砂漠で暮らす人々はイスラム教徒が多く、服装に関するルールも厳しいようです。しかし、日本の綿紡績の生地が人気があると聞いたことがあります。紫外線防止、撥水、透湿などの機能素材を使い、そこにテーラードの技術を加えれば、高級品としての可能性が出てくるでしょう。

また、これらの国々でも結婚式にはテーラードジャケットを着る機会が多いので、日本独自の金襴、ラメ糸使い、クリスタルビーズ等を駆使したジャケットのニーズはあるでしょう。これらが得意なテキスタイルメーカーとコラボして、ブライダルフォーマルの展示会を行うのも良いかもしれません。

編集後記「締めの都々逸」

「凄い技術で 遊んだものを 軽く作って 売ってみる」

日本人は真面目だから、技術を突き詰めるのが好きです。道を究めるように。

でも、本格的であればあるほど、それを受けいれる顧客の数は少なくなります。また、洋服のように欧州がルーツのものは、いくら頑張っても本格的なラグジュアリーブランドにはなれません。

世界の人が日本の歴史や文化を高く評価して、来日しているのに、日本人は海外のブランドやデザインを一生懸命に学んでいるのです。そろそろ、日本人は日本らしさで勝負しても良いのではないでしょうか。顧客はそれを望んでいます。問題は作り手の意識なのです。(坂口昌章)

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