他国の説得も効果なし。プーチンが打って出る「ゼレンスキー斬首作戦」

 

【台湾情勢はアジアおよび世界の安全保障の火薬庫となるのか?】

2023年というタイムラインで見ると、台湾をめぐる戦いは起きないと思われます。少なくとも武力紛争という形では。

ただ、昨年の台湾の地方選の際に見受けられた中国共産党と人民解放軍のサイバー部隊などによる“ソフトな侵略”は2023年も継続・強化されることとなり、来年の総統選挙に向けて民進党への徹底攻撃にでるものと思われます。

現任の蔡英文総統は2024年1月の任期までは全うするようですが、民進党の主席を辞任せざるを得なかったことで、元々は自身の路線を継続してくれる後継選びという位置づけだった次期総統選には、自らと距離を置く候補が出馬することになり、必然的に対中強硬策は鳴りを潜めることになると思われます。

国民党の候補が勝っても、新しい民進党の候補が勝っても、中国との距離を縮めようとする方向性を取ると見られており、その背景には北京が着実に進めている情報戦の足跡が見えてきます。

じわじわと中国との融和の推進というイメージが台湾の市民に刷り込まれていき、台湾企業による中国本土への投資と進出の凍結も徐々に解かれていくことで、より中国との経済的な結びつきが強化されていくイメージが次々と打ち出されるのが2023年かと思われます。

もちろん蔡英文総統は対中強硬策を崩すことは考えられませんが、すでに彼女の政権はレイムダック状態にあると言われており、台湾の政治コミュニティはすでに“次”に向けた準備を始めていると言われています。

そのような中、気になるのが、中国側が着々と進めている本土と中国を繋ぐ大橋の建設です。これはかなりの大工事になると思われますが、表面上は中台企業による合作という体を取り、融和のイメージと経済的に密接な関係のアピールを前面に出しつつ、中国が台湾併合・統一の最後の壁と考えてきた“物理的な接続”を可能にする狙いです。

以前にもお話ししましたが、仮に中国人民解放軍による“武力による併合”が行われる場合、台湾のコントロールを維持するためには相当のロジスティクス、つまり兵站の確保が必要となりますが、現時点では人民解放軍にその能力はまだなく、その獲得を阻んでいるのは噂の台湾海峡であるため、ここを橋でつないでしまうことで、海上輸送から陸上輸送による物資の供給が可能になるため、大きな弱点を克服することが可能になるようです。

もちろん、ロシア・ウクライナ戦争におけるクリミア大橋の爆破のように、何者かが爆破してしまわなければ…というbig ifがつきますが。

ただ台湾に対する北京からの圧力は一層強まることと思われます。習近平体制の第3期目も、実際の運用は3月からですが、すでに入っていると言っても過言ではなく、権力的な基盤は盤石と言えます。軍の中枢も習派が占めることから、クーデターの可能性も排除できますし、宿願である中華統一(台湾の併合)を高らかに宣言し、党内のベクトルも同じ方向に向かせたことは大きいと思われます。

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