他国の説得も効果なし。プーチンが打って出る「ゼレンスキー斬首作戦」

 

【ロシア・ウクライナ戦争に決着はあるか?】

あと18日ほどでロシアによるウクライナ侵攻から11か月。そして2月24日には丸一年を迎えます。しかし、これまでのところ、ロシア・ウクライナともに激しく痛みつつも、勝敗の行方は見えてきませんし、落としどころも見えてきません。

ロシアも、欧米諸国とその仲間たちも、2月24日にロシアがウクライナに侵攻するという“特別作戦”を実施した際には「3日ほどでロシア軍がウクライナ全土を掌握する」と考えていましたが、2014年以降、欧米諸国から軍備を提供され、ウクライナ軍は高度な軍事訓練を受け、同時に成人の国民の多くが戦闘訓練を受けていたウクライナは、大方の予想に反して、母国防衛の旗印の下、11か月間持ちこたえてきました。

アメリカはウクライナに対して大規模な軍事支援と経済支援を行い、同時にロシア包囲網を作り上げて、ウクライナの防衛を後方から支援してきましたが、とても慎重にロシアとの軍事的な直接対決は避けてきています。

調停チームのメンバーの表現を借りると「アメリカはロシアに対峙するにあたり、非常にデリケートなラインで踏みとどまり(stay within very thin line)、ロシアによる愚行は決して許さないが、この戦争はアメリカの戦争ではない」というメッセージをロシアに送っているといえます。これはモスクワサイドも認識し、ワシントンでもシェアされているようです。

そのようなラインの下、行われたのが実は昨年12月21日から22日に実施されたゼレンスキー大統領のアメリカ訪問と言われています。

ゼレンスキー大統領の訪米はサプライズとして伝えられ、「どうやって秘密裏に彼をアメリカまで運んだか」についていろいろな議論がなされましたが、どうもワシントンはモスクワに対して事前に通告していたようです。

前回号で私は「たったパトリオットミサイル1基と追加的な軍事支援のためだけに危険を冒してワシントンに呼び寄せられて、アメリカの防衛予算成立のための最後のカードに使われただけの客寄せパンダ」と揶揄しましたが、どうもアジェンダには「ロシアとウクライナの停戦協議のためのお膳立てとアメリカのバックアップ」という内容が含まれていたようです。

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しかし、ゼレンスキー大統領は「ウクライナは奪われた領土を取り戻すまで戦い、かつロシアに今回の侵略のコストを払わせる」とアメリカ政府からの停戦協議に関する提案を全面的に拒否し、代わりに「今必要なのは停戦協議や落としどころではなく、さらに有効な兵器、ロシアと戦い、企みを挫くための軍事支援だ」と訴えかけたそうです。

結果はご存じの通りで、かつもうすぐ射程150キロメートルのハイマースが供与されるとの情報も入っていますが、実情としてその“ハイマース”を今、ウクライナに提供できるか否かは、米軍の軍備管理上、定かではなく、決定はペンディングになっているようです。

そのやり取りが続けられている間、頑ななウクライナの主張についての報告を受けて、ロシアはウクライナ国民の生活とライフラインを徹底的に破壊する攻撃を強化する動きに出ました。それも核弾頭搭載可能のx-55精密誘導ミサイルを一部投入して送電網、輸送網、ガス施設をピンポイントに破壊し、対ウクライナ支援の9割近くが入ってくるポーランド国境に近いリビウ周辺にも集中的な攻撃を加えています。

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